1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動中だ。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、安田記念に出走する管理馬レッドモンレーヴについてお届けする。
* * *
ダービーが終わり、今週からは2歳戦もスタートしますが、GI戦線もまだまだ続きます。
競馬は「点ではなく線で見ることが大事」。そこで今回は今週末の安田記念に出走する管理馬レッドモンレーヴ(以下モンレーヴ)が、5月11日に行なわれた前哨戦の京王杯スプリングカップでどんな走りをしたかを振り返ってみます。レースの中で何が起こっていたかを知ることで、安田記念を検討する参考になるかもしれないし、競馬の奥行きも実感できるはずです。JRAのホームページでレースのVTRを観てから読んでいただけると、なおわかりやすいかもしれません。
スタートは普通に切ったものの二の足が速い馬が前に出てモンレーヴは最後方。これは決して意図したわけではありません。この日は内ラチから3mのところに仮柵を設けたBコースになったので内側でも馬場がよく、しかも最初の600mが34.8秒というスローペースなので前が止まらない流れ。そんなことで、馬券を買っていただいたファンの中には、ガックリ来た方もいるかもしれません。
第4コーナーで大外に出た段階でもまだ最後方。しかしゴールまで残り400mのあたりで騎手がゴーサインを出すと、ギアが上がったように前の馬を追い抜いていきます。場内アナウンスでも「前を呑み込むかどうか!?」という凄まじい勢い。ジョッキーも「これは行ける」と思ったはずです。
ただし、今回は直線での脚がよすぎて、先頭に立つのが早すぎました。勝ったウインマーベルは、1400mが得意な馬。手ごたえが残っていたので、上がってくる馬を待ってから追い出そうとしていましたね。
壮絶なたたき合いの末、写真判定でハナ差負けでしたが、安田記念に向けては、いいレースだったと思います。勝ち馬をはじめとして前に行った馬の多くが上位に残り、内が有利な馬場にもかかわらず、外を回って差してきたのは評価できます。ただ1着賞金は5900万円で2着は2400万円。ハナの差だけで3500万円もの差がついてしまうのも競馬です。