表舞台から姿を消して30年以上。生きる伝説となった、昭和歌謡の女王・ちあきなおみ(76才)が大きな決断を下した。最愛の夫の三十三回忌に合わせるように、動き始めた彼女の心境の変化とは──関係者たちの証言をもとに、知られざる歌姫の近況に迫る。【前後編の前編。後編を読む】
耳元でささやくようなハスキーボイス。時には激しく、時には穏やかに、心のひだに訴えかけてくるような歌声が聴く者をドラマチックな歌の世界に引き込む。抜群の歌唱力と圧倒的な表現力で天才歌手の名をほしいままにしたちあきなおみが、忽然と姿を消してから30年余り。生きる伝説と呼ばれるちあきの往年のヒット曲が、デビュー55周年を迎える6月10日から、音楽サブスクリプションサービスで配信される。
「ちあきさんが在籍したレコード会社3社が数年前から進めていた企画で、代表曲『喝采』(1972年)をはじめ『矢切の渡し』(1982年)や『黄昏のビギン』(1991年)など全シングルとアルバム曲、計300曲以上の配信が始まる予定です。
1992年に芸能活動を休止して以来、ちあきさんは公の場に一度も姿を見せていませんが、熱狂的なファンが多く根強い人気を誇る。これまでにもベスト盤や全集が何枚もリリースされていますが、各レコード会社にはサブスク解禁の要望の声がひんぱんに寄せられていたそうです。まさにファンに後押しされた“再始動”と言えるでしょう」(レコード会社関係者)
芸能界でも往年のちあきの歌声に魅了された“後輩”は少なくない。全盛期を知らない上白石萌音や門脇麦などがちあきのファンを公言し、テレビで彼女の歌を披露したこともあり、若い世代にもちあきの名前や曲が浸透している。
「最近の昭和歌謡ブームは、テレビ番組でも特集されるほど。ちあきさんにも『サブスクを解禁したら、歌声をもう一度若い人たちにも届けることができる』と話したところ、ご本人も納得してくれたと聞いています」(前出・レコード会社関係者)
ちあきの元マネジャーで『ちあきなおみ 沈黙の理由』(新潮社)の著書がある古賀慎一郎氏が言う。
「ちあきさんの歌はいつの時代も人を引きつけてやまない魂の歌。体温や感情があり、血が通っているからこそあらゆる世代の人に受け入れられているのだと思います。
配信を了承したのは意外でしたが、ファンの声が彼女の心を動かしたということでしょう。歌に全身全霊を傾け、聴きたいと思ってくれる人のために歌いたいと考えていたかたでした。ちあきさんは『私にはファンなんかいないよ』と言いながら、誰よりも敏感にファンの気持ちを感じ取り、時代の流れを読んでいました」
(後編へ続く)
※女性セブン2024年6月13日号