田中角栄本人から200万円
機密費に触れたのはこの時だけではないという。
「歴代の総理から何らかの形でアプローチがありました。田中角栄をインタビューした後、本人が僕に封筒を差し出した。中身は200万円。その場で突き返すのも失礼だと思い、すぐに田中事務所に行き、首席秘書官の早坂茂三に『返したい』と封筒を突き返した。すると早坂は『田原君、こんなことをするとオヤジは怒ってしまうぞ。与党だけでなく、野党の取材もできなくなるぞ』と言ってきた。震えたが、受け取らない意志は譲れなかった。
その2日後、早坂から電話が掛かってきて、『田原君、何とオヤジが(返却を)OKした』という。その後も中曽根康弘さんなど歴代の総理や首席秘書官から機密費を出されたが、すべて断わりました」
そして「受け取る側」の事情をこう語った。
「機密費が評論家やジャーナリストに渡されていることは知っていた。ただ、受け取るのは欲のためではなく、受け取らないと総理大臣と喧嘩をすることになり、仕事に支障が出るからです。新聞記者OBの評論家は、『上司が受け取っているのに、部下が受け取らないわけにはいかない』と言っていた。だから批判はしたくない。僕が断われたのは、フリーで上司がいなかったからです」
※週刊ポスト2024年6月7・14日号