毎月約1億円、年間約12億円もの税金の使途が“ブラックボックス”になっている──それが「官房機密費」だ。国会で「政治とカネ」の改革を掲げて必死にアピールする岸田文雄・首相も、そこには決して手をつけようとしない。
このままでは、次の総選挙で機密費が好き放題に使われかねない。そこで本誌・週刊ポストは、官房機密費に触れたことがある人物たちに総力取材した。
「いいお茶を渡したい」と女性がやってきた
官房機密費が大きな注目を集めたのは、2010年4月のこと。小渕恵三内閣で官房長官を務めた野中広務氏がTBSのテレビ番組内で、在任中(1998~1999年)に複数の評論家に「機密費から数百万円を届けた」と発言したのだ。後に配布先を記したメモも流出した。
当時の証言は、「前任の官房長官からの引き継ぎ簿に評論家らの名前が記載され、『ここにはこれだけ持っていけ』と書いてあった」というもので、「返したのは、ジャーナリストの田原総一朗さんだけだった」とも言及していた。
機密費を「受け取る側」になるメディア関係者が口を開くことはほとんどないが、どのように渡されるものなのか。田原氏が証言する。
「小渕政権時代、野中さんから連絡があり、『いいお茶を渡したい』というので、喫茶店で受け取ることとした。すると、着物を着た女性がやってきて、紙袋を渡された。女性は『お金ではないと』言ったので受け取った。
女性が帰った後で紙袋の中身を確認すると、そこには100万円の封筒が10個ありました。1000万円です。直接本人に返さねばならないと、野中さんの地元の京都を訪ね、電話を入れたうえで事務所に行ったんですが、本人は不在。『受け取れません』というメモと紙袋を置いてきました」