街中に散乱されたゴミ(AFP PHOTO / 韓国国防省)

街中に散乱されたゴミ(AFP PHOTO / 韓国国防省)

かつてはパンストを

 実は風船を使った韓国と北朝鮮の攻防の歴史は長い。自らも韓国側から風船を飛ばした経験もある麗澤大特任教授の西岡力氏が話す。

「私が韓国に留学していた1960~1970年代などは、北朝鮮のほうが工業都市を抱えて発展していました。当時は、そんな北朝鮮の主体思想などを喧伝するビラが風船に乗って飛んできて、ソウルの至る所に落ちていました。また、韓国の漁民が3000人さらわれたりしていたんですが、北朝鮮はこのうち2500人を韓国に戻して『豊かな平壌(北朝鮮の首都)』を喧伝させていたんです。そして韓国が発展してあっという間に逆転すると、今度はパンストを韓国が飛ばしたんです。薄くて丈夫なパンストは北朝鮮では生産できないだろうというアピールですね」

 約10年前に西岡氏は日本人の拉致問題を指弾するビラを韓国側から北朝鮮に向かって飛ばしていた。

「韓国国内の左派の妨害に遭ってしまい、大変でした。風次第ですが、かなり遠くまで飛ばすことができます。今回これだけの量が韓国に飛来したのは、かつて無かったことだと思います。動物の糞のようなものはあったようですが、人糞がなかったようですね。北朝鮮では大事な肥料として集められているので“ゴミ”に含まれなかったんでしょう」(西岡氏)

 汚物風船について韓国世論は「幼稚すぎる」などとあきれているというが、今回の件を受けて韓国政府は6年前に北朝鮮と結んだ南北軍事合意の効力を停止することを決定した。汚物風船による韓国と北朝鮮の緊張の高まりは、日本にとっても対岸の火事ではすまない。

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