今年の7月で77才、喜寿を迎える安奈淳。宝塚歌劇団の男役トップスターとして多くのファンを魅了し、退団後も華やかな舞台で活躍した。しかし安奈の人生は、C型肝炎、膠原病、白内障、心臓弁膜症、腎臓がんなどの病魔との闘いだった。つらく苦しい日々は彼女に何を与え、そしていま、何を思うのか──。【全3回の第3回。第1回から読む】
70才を過ぎてから体調は良好だという安奈。心臓弁膜症の治療などで定期的に病院には通っているものの、体のリズムに合わせた生活をし、仕事も楽しんでいる。
「食事は、野菜中心でできるだけ油ものは控えています。運動は、呼吸を整えて体幹が鍛えられるピラティスを週に1回続けています」(安奈淳・以下同)
生きている限り歌い続けたいからと、月に1度はボイストレーニングにも通っている。
「1時間もやればヘトヘトになるんですけどね(笑い)。一生歌い続けたいから、それなりに努力も必要ですよね」
できないことより、いまできることをやる
食事に運動にと鍛えてはいるものの、若いときのようにはできないこともたくさんある。
「昔は歌詞やせりふがすぐに覚えられて、その記憶力のよさといったら“私って天才かも”なんて思えるくらいだったのですが、いまでは1曲の歌詞を覚えるのに何か月もかかって……」
覚えられないなら、体に曲を染み込ませるように、繰り返し稽古をするしかないという。
「一度でスッと覚えていたときの歌より、何度も練習した歌の方が“深みが増した”なんていわれることもあって、うれしいですね。できないなら仕方がない。年を取ったらそういうもの。練習して、いまできることをすればいいと思っています。それでも本番で忘れてしまってアドリブで歌っちゃうこともあるんですけどね。それはそれですごいでしょ(笑い)」
いまできることをやる──。それも健康ではないと始まらない。
「病気のデパートのような私の体。すべては自己責任なのですが、後悔はしていません。だって人生は長いようで短い。クヨクヨする時間がもったいないもの。それに私の姿を見て元気になってくれる人がいるなら、少しでも役に立ちたいと思うんですよね」