──『Into The Light』をイベントのタイミングで発表したということは、楽曲の制作中は、まだカミングアウトする前の時期ですよね。皆さんの反応を含めて、先が見えない状況だったんですね。
そうなんです。音楽のことも、カミングアウトのことも考えなくてはならない時期で、ちょっと考えることが多すぎるくらいでした。
──カミングアウトを経て、音楽活動的には『Into The Light』のあと、今年3月に『FUN FOREVER』、4月に『Upside Down』をリリースされました。改めて音楽制作の楽しさを感じることはありましたか?
最近、音楽がより好きになりました! いままでは、與真司郎は“こういう歌詞を歌わなくてはいけない”、“こういうパフォーマンスを見せなければならない”っていう考え方があったんですよ。
──いわゆる“アーティストイメージ”があった。
はい。『Into The Light』のときには、まだ“こうあらねばならない”という昔の思考がちょっと残っていた時期で。でも、歌詞には自分自身のことを入れたかったから、そういう意味では挑戦の曲だったんです。
──『Into The Light』は、自分のこれまでの人生と内面について掘り下げた歌詞でしたよね。
自分が昔、葛藤していた気持ちを歌詞に入れたかったので、結果的にすごくいいスタートダッシュの曲になったと思います。でも最近は、楽曲を作りたいな……というインスピレーションが沸いたときに、音楽プロデューサーと作ればいいって思うようになったんです。ジャンルも問わず、歌いたいものを歌えたらいいなって思っています。歌うことも、好きになりました! 家の中でも、大声で適当に歌ったりしているくらい(笑い)。いままでは歌うことにも、自信がなかったんですよね。グループにいるときには、もともとメインボーカルのメンバーがいたので。
──デビュー当初のAAAはメインボーカルが3名で、ほかのメンバーは基本的には歌わないスタイルでしたよね。数年たってから、全員で歌って踊るスタイルへと変化していって。
そうなんです。だから、もともとメインボーカルじゃない自分が歌うことになったときに、“下手だ、歌うべきじゃない”っていうコメントが、たくさん届いていたんです。10代の頃にそういう言葉を受けてしまうと、やっぱり自己肯定感が下がってしまって……。いまでは受け流せるようになったし、自分に自信を持てるようになりましたけど。
──音楽活動を休止されていた間、歌やダンスに触れる機会はあったんですか?
歌に関しては、なんとなく歌ったりしてはいたので久しぶりという感じはないんです。ダンスは、休んでいた間は何もしてなかったんですよね。この前久しぶりに、LAのダンススタジオに友達と行って踊りましたけど。でも、ダンスは10才のころからやっていたことだから、(身体が)そこまで忘れないんです。
──MVを拝見するとブランクを感じなかったので、実は密かにダンス練習をしていたのかな……と思っていました(笑い)。
全然(笑い)。これから超下手になることはないと思うし、逆を言うと、超上手になることもないと思うんですけど(笑い)。自分らしく、與真司郎らしいダンスができればいいなって思います。休んでいた間に音楽が嫌いになったみたいなこともなくて、むしろ自分が本当につくりたい音楽を見つめ直せた……という感じですね。
──AAAとしてデビューされてから約20年の間に、音楽業界も大きく変化しましたよね。リリースの仕方をとっても、かつては毎月のようにCD連続リリースするといった手法があったけれど、最近ではないですし。
そうですよね。そういえばAAAも、デビュー当時とか、10周年のような記念イヤーには何か月も連続リリースする……ということをやっていましたね。いま考えると、ちょっと信じられないスケジュール(笑い)。
──いまではあり得ないですよね(笑い)。長年、音楽活動をされてきていますけど、いま、音楽的な流行みたいなものに対してはどのように捉えていますか?
いままでは、流行と自分がやりたいことの“間をとる”みたいな意識があったんですよね。それこそ、活動再開後の『Into The Light』からの3曲に関しても、いままでよりは自分の体験をいれているけれど、例えばMVではダンスシーンがあったり、以前のスタイルを思い出させるような面もあるんです。