競技委員が試合会場や中継で注目されることは滅多にないが、トーナメントの最終日・最終組から呼び出しがかかるとテレビカメラに囲まれる。最も緊張する場面だという。
「カメラは怖いです。説明がマイクに拾われるので、間違った用語を使わないように、選手に対して威圧的に聞こえないように……と、ドキドキしながら対応しています。その場にいる選手は説明を理解してくれていても、テレビ中継を観ている人はいろんな受け止め方をしますから、言葉には細心の注意を払います。選手が状況を説明する言葉を私が復唱して、丁寧に再確認します。こういったシチュエーションを常に想定し、落ち着いて言葉を発するように心掛けています」
(第3回に続く)
※『審判はつらいよ』(小学館新書)より一部抜粋・再構成
【プロフィール】
鵜飼克郎(うかい・よしろう)/1957年、兵庫県生まれ。『週刊ポスト』記者として、スポーツ、社会問題を中心に幅広く取材活動を重ね、特に野球界、角界の深奥に斬り込んだ数々のスクープで話題を集めた。主な著書に金田正一、長嶋茂雄、王貞治ら名選手 人のインタビュー集『巨人V9 50年目の真実』(小学館)、『貴の乱』、『貴乃花「角界追放劇」の全真相』(いずれも宝島社、共著)などがある。ゴルフの競技委員のほか、野球、サッカー、大相撲など8競技のベテラン審判員の証言を集めた新刊『審判はつらいよ』(小学館新書)が好評発売中。