出典/警察庁

出典/警察庁

きれいな孤独死を迎えるために「意思決定」は欠かせない

 孤独死した人たちは、死の前後だけでなく、生前からずっとサポートを必要としていたのかもしれない。支援を求める声の高まりに、行政も本格的に注力し始めた。中でも65才以上の人口のうち、ひとり暮らしが占める割合が全国トップレベルの東京都豊島区は「終活あんしんセンター」を開設した。豊島区福祉部高齢者福祉課長の今井有里さんが語る。

「豊島区は単身世帯が多く、もともとひとり暮らしのかたや配偶者を亡くしたかたもいます。生活状況や経済的状況もさまざまです。センターの目的は“どう最期を迎えるか”をあらかじめ考えることで、区民のかたに不安や悩みを解消してもらうこと。それが、いまの生活を充実することにもつながると期待しています」

 業務内容は、終活の始め方や遺言書、相続、生前整理や家財処分など全般的な「終活相談」のほか、万が一の事態に備えて緊急連絡先や遺言書、エンディングノートの保管場所、献体の登録先などを登録しておく「終活情報登録事業」を23区で初めて2022年4月に開始した。

「本人が亡くなった際などに、警察や消防、医療機関などあらかじめ登録された照会に対し、区が情報を開示します。緊急連絡先や遺言書の保管場所などを区に登録しておき、亡くなった場合には事前に指定した親族や友人などに情報を伝える役割を担うこともあります」(今井さん)

 相談件数は年間のべ700〜800件で推移し、70〜80代が7割を占め、相談者の6割がひとり暮らしだ。区民の関心は高く、講演会や相談会などはすぐに定員が埋まるという。終活への関心が高まる中、きれいな孤独死を迎えるためには「意思決定」が欠かせないと語るのは門賀さん。

「重要なのは、自分がどうしたいのかを明確にしておくことです。葬式やお墓という死後のことばかりでなく、死に至るような病になった場合、延命治療をどうするかまで決めておく。意思決定をしておかないと自分の死を誰かに決断させることになりますが、私は、それは最もやってはいけないことだと思う。他人の死を決めるのは誰にとってもつらく、嫌なことですからね」

 門賀さん自身、来るべき最期に向けての準備を始めていると語る。

「私は尊厳死協会に加入済みで、万が一のときも延命治療を受ける気はありません。またリビング・ニーズ特約のある生命保険に加入し、余命半年などと診断されたら保険金の一部を先に受け取れるようにしています。お墓に関しても合同墓に入るつもりで、以上3点についてはエンディングノートにも記しています」

 意思決定を終えたら、周囲に話して伝えておくことも大事だという。

「死んだ後、周りはお葬式やいろんな手続きで忙しく、エンディングノートを探して読む暇などなく、事前のプランニングが無駄になることもある。だから決めたことは生前のうちに周囲の人間に話して伝えておくことがとても大事。意思決定を終えただけで安心してはいけません」(門賀さん)

(第4回へ続く。第1回から読む)

※女性セブン2024年6月27日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

数年前から表舞台に姿を現わさないことが増えた習近平・国家主席(写真/AFLO)
執拗に日本への攻撃を繰り返す中国、裏にあるのは習近平・国家主席の“焦り”か 健康不安説が指摘されるなか囁かれる「台湾有事」前倒し説
週刊ポスト
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
維新はどう対応するのか(左から藤田文武・日本維新の会共同代表、吉村洋文・大阪府知事/時事通信フォト)
《政治責任の行方は》維新の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 遠藤事務所は「適正に対応している」とするも維新は「自発的でないなら問題と言える」の見解
週刊ポスト
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《自維連立のキーマンに重大疑惑》維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 元秘書の証言「振り込まれた給料の中から寄付する形だった」「いま考えるとどこかおかしい」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《バリ島でへそ出しトップスで若者と密着》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)が現地警察に拘束されていた【海外メディアが一斉に報じる】
NEWSポストセブン
大谷が語った「遠征に行きたくない」の真意とは
《真美子さんとのリラックス空間》大谷翔平が「遠征に行きたくない」と語る“自宅の心地よさ”…外食はほとんどせず、自宅で節目に味わっていた「和の味覚」
NEWSポストセブン