芸能

『アンチヒーロー』悪徳検事正役で野村萬斎が見せる怪演 ”半沢”の香川照之の演技とはどこが違うのか?臨床心理士が分析

狂言方和泉流の能楽師であり、俳優、演出家としても活躍する野村萬斎(時事通信フォト)

狂言方和泉流の能楽師であり、俳優、演出家としても活躍する野村萬斎(時事通信フォト)

 これまでドラマには様々な悪役が登場してきたが、視聴者の印象に残るのは、そのキャラクター設定だけでなく演じる俳優の芝居によるところも大きい。2024年4月から放送されている日曜劇場『アンチヒーロー』(TBS系)では、エリート検事正・伊達原泰輔に扮する野村萬斎の悪役ぶりが出色だ。臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、見たことがあるようでも新しい、野村萬斎の悪役について分析する。

 * * *
 あまりの怪演ぶりに既視感しかない。なのにTBSの日曜劇場は初出演だという。狂言師、野村萬斎さん演じる悪役ぶりがすごい。

 野村さんが出演しているのは『アンチヒーロー』。主役の長谷川博己さん演じる明墨弁護士と対峙する東京地検トップの悪徳検事正、伊達原役だ。回を重ねるごとに激しくなっていく顔芸、激しい感情が見え隠れする声音とセリフ回しから目が離せなくなる。

 ネット上の辞書によると、怪演とは”不気味でありながら、奇妙な魅力のある演技”となる。怪演といえば日曜劇場『半沢直樹』に出演し、その演技で注目を集めた香川照之さんがいる。既視感の正体は香川さんの大げさで感情たっぷりの顔芸と演技のせいだ。今にも爆発しそうな感情をなんとか抑え込んで、半沢直樹に土下座するシーンは今でも思い出す。だが野村さんの演技はそんな香川さんの演技とは一味違っている。

 野村さんの演技は、感情の激しさを見せながら、同時にその演技から冷淡さや計算高さといった氷のように冷たく利己的な心を感じさせる。感情的になればなるほど、言葉の1つ1つをはっきりと発し、声のトーンが多彩に変化しても、セリフの1つ1つはきっちりと聞き取れる。明墨弁護士を演じる長谷川さんも活舌がいいが、野村さんも活舌がめちゃくちゃいい。感情の波が激しさを増し、テンションが上がっていくほど早口になるが、セリフは上滑りすることなく活舌はますますはっきりしていく。だから感情的になればなるほど、逆にどんどん冷めていくという計算高く腹黒く、謀略を張りめぐらす伊達原のキャラクターが際立ってくる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン