京王線・柴崎駅から歩いて6分ほど、甲州街道を渡った先に『恵比寿屋』と書いた大きな看板が目に入る。昭和31年から米と酒を販売するこの店で、3代目店主・海老水(えびすい)宗次さん(56歳)がこの春から角打ちを始めた。
レジ横には青とメイプル色のエレキギターが2台置かれ、白くて高い壁にはプロジェクターから映像が投影されて音楽が流れる。さながらミュージックバーの趣だ。
「通りがかったら、店の窓から、ギターを弾いている人が見えて、吸い寄せられた」(40代・営業職)と言う客がいるように、店主自らがギター演奏することもある。
この地で育った店主を中学時代から知る同級生の女性は、「海老水くん(店主)は、長嶋茂雄ファンの野球部員でギター好き。当時からアイデアマンだったのよ。お店の場所はずっとここで変わらないんだけど、内装がこんなふうになるとはね!」と、角打ちになったことを大歓迎。ときどき、飲みに来るにようになった。
「親父(先代)は、ここで惣菜を作って売っていたんです。僕の代になって、なんか新たなことをやろうと思っていろいろ考えていたら、僕の好きな“酒と音楽”の合体が浮かんできましてね。それでこういう店にしちゃったのよ」(店主)。
角打ちができるカウンターバーを設え、そのすぐ後ろには冷蔵庫。いい意味で小ぢんまりとしている。客同士が語り合うのにも、使い勝手のよい空間だ。
やがて、「仕事帰りに、好きな曲を聴いて一息つける。いい生活パターンができました」(前出の40代)、「居心地がよくて、30分のつもりがついつい2時間居ちゃうこともあるよ。一緒に飲んでいた人も長っ尻になっちゃって、嫁さんから『遅い!』って連絡が来ちゃってさ(笑い)」(50代、録音技師)、「親戚の家のリビングに寄る感覚なんですよね」(50代、設備業)と繰り返し訪れる客がどんどん増えて、客同士の交流も深まってきた。
「お米をいつも配達してもらっていたので、ここにお店があるのは知っていたけれど、まさか、中で飲めるようになるとは! まさか!」(30代・地元の主婦)と地域の人もこの店の進化を喜んでいる。