ついに、自民党で「岸田おろし」の号砲が鳴った。自民党の地方議員から“退陣要求”まで飛び出した背後では、党内の大物国会議員たちが、“決起”の準備を着々と進めていた──。
「岸田(文雄)内閣の状況は、支持率がどん底まで下がった森喜朗内閣の末期にそっくりです。あの時、自民党は誰からも全く相手にされなくなった。岸田総理は安全保障など重要な政策をやってきたが、裏金問題で何をやっても支持率が回復しませんから、ここがいわゆる辞め時です」
「週刊ポスト」の取材にそう語るのは、自民党横浜市支部連合会会長の佐藤茂・横浜市議だ。6月4日の同市連の定期大会で、「あえて総裁自ら責任を取り、身を引くよう、苦渋の決断をしていただきたい」と岸田首相に正面から退陣要求を突きつけた人物である。
市連大会では「ポスト岸田」にもこう踏み込んだ発言をしている。
「自民党総裁選では、大胆な改革と政治刷新を進めることのできる強いリーダーシップのとれる新進気鋭の総裁を選び、変革の証を国民に示していかなければなりません」
それに呼応するように、続いて挨拶に立った自民党神奈川県連会長の小泉進次郎・元環境相が、「2009年の政権交代の時に初当選した私からすれば、あの時より怖い」と自民党への逆風、岸田政権への国民の批判の強さに危機感をにじませた。
一地方議員ながら、佐藤氏の発言をきっかけに自民党内は大きく揺れ始めた。自民党神奈川県連関係者が打ち明ける。
「佐藤市議の背後には神奈川政界の大実力者で反岸田の菅義偉・前首相の存在があるとみられている。横浜市連の大会で岸田おろしの火の手を上げることはシナリオ通りだった」
「劇的な人が出ないとダメ」
事態はさらに動く。菅氏が6月6日に安倍派の萩生田光一・前政調会長、茂木派の加藤勝信・元官房長官、二階派の武田良太・元総務相の「HKTトリオ」と会合を持ったからだ。萩生田氏と武田氏は裏金問題で岸田首相から「役職停止」の処分を下され、いわば首相に恨み骨髄。党内では会合は「岸田おろしの策謀」とみられているが、そこに進次郎氏が加わったことで衝撃が広がった。
「役職停止処分の萩生田、武田は総裁選に出馬できない。5人組の会合は、事実上、菅さんたちが加藤か進次郎を総裁選に担ぐという意思表示に他ならない」(閣僚経験者)