万全に見えた中尾彬さんの「終活」だったが、当事者同士にしかわからない“問題”が残されていた。中尾さんが抱えていたのは、けっしてまれなケースではない。やはり相続は難題だ──。
「同い年なので、私が先に逝くかなと思っていました……。ずっと音沙汰はなかったですし、もうあちらとは関係はない。ですけど……息子への対応を振り返ると、もっと違った接し方があったんじゃないかと思っています」
言葉を選びながら複雑な胸中を口にしたのは、5月16日に心不全で亡くなった中尾彬さん(享年81)の元妻だ。中尾さんは再婚した池波志乃(69才)とともに、芸能界でいち早く「終活」に取り組んだ夫婦として知られている。誰よりも念入りに進めたはずの終活だったが、中尾さん亡き後にもしこりは残されていた。
本格的に終活を始めたのは2013年。まずは証人の立ち会いのもとで遺言状を作成。不動産の整理にも着手し、千葉にあった中尾さんの実家と当時所有していた沖縄のセカンドハウスを売却した。池波の実家の菩提寺に生前墓も建てた。
おしどり夫婦の終活は注目を集め、2018年には共著『終活夫婦』(講談社)を上梓。以来、中尾さんと池波はメディアでも積極的に終活について語るようになった。だがその中に、夫婦があえて触れなかった終活の重要なトピックがある。
「中尾さんのトレードマークだった“ねじねじ”を大量に処分したエピソードや、友人関係をも躊躇なく断捨離した終活事情を語る一方で、『相続』について言及することはほとんどありませんでした。一般的に終活において重要なポイントとされる相続を話題に出さなかったのは、息子さんの存在があったからかもしれません」(中尾さんの知人)
中尾さんと池波の間に子供はいないが、元妻との間には息子がひとりいる。法律上、中尾さんの法定相続人は、池波とその息子の2人ということになる。
1970年に元妻と結婚して息子が誕生した中尾さんだったが、別の女優と不倫関係になり1975年から妻子と別居。慰謝料をめぐる調停が長引き、1978年に2000万円を支払うことでようやく離婚が成立した。その頃には中尾さんは女優との関係を解消しており、テレビドラマでの共演をきっかけに池波との交際をスタートさせていた。そして離婚成立と同じ年に、池波とスピード再婚を果たした。