怒りの佐藤と呼ばれる母・愛子を陰日向となく気遣う娘・響子を演じた。「長生きするって大変なのねぇ」にこもる万感には胸が熱くなる。(c)2024映画「九十歳。何がめでたい」製作委員会 (c)佐藤愛子/小学館
演じるうえで意識したのは家族のバランスだったという。
「家族って、みんなそれぞれ、“今はあなたの重要な時期”って無意識に協力体制になるバランサーのような時期があるような気がするんです。例えば、お兄ちゃんが受験だから、みんなで極力静かな声で生活していたり、神社に行って各々兄の合格祈ったり……その“今”が断筆後の愛子先生であり、この映画で言えば(草笛)光子さんだったと思うんです。だから私はもうそのバランサーとして、ほんの少し存在が見えればいいなっていうぐらいで考えていました」
完成した映画を見てどう思ったか。真矢さんに感想を聞くと──。
「とにかく光子さんが素晴らしい。私の立場でそんな言い方は失礼なんですが、非常にそう思いました。役者って長くやっていても、すべてが光って、すべてが当たり役になるわけじゃなくて、そういう役に当たるのは奇跡のような出来事なんです。でも、今作は誰が見ても光子さんの当たり役。輝かしい奇跡の瞬間を、私は目の前で見たんだと思います」
原作の2冊のエッセイからも刺激を受けたという。
「愛子先生に凄みある生き方のようなものを感じています。あるがままに飾らないことは如何に粋かと。そして、前に進む原動力は人との関係から生まれること、周りの人とわちゃわちゃと関わっていくことが人生の楽しみであり、人として前進できる力が鍛えられるのだと教えていただきました」
昨年、登山と俳句を始めるなど、「やりたいことが多すぎて、いくら時間があっても足りない」と話す真矢さん。今年、還暦を迎えて気持ちが楽になったという。
「今までは少しでも若く見られたいと年齢にあらがっていたことに気がつきました。これからは年を重ねることには無頓着で、その時々で考えればいいやと思っています。私の母もそんな人でサバサバしていました。そこはちょっと愛子さんと重なるんですよね」
※女性セブン2024年7月4日号