7月7日に投開票される東京都知事選は、過去最高の立候補者数やポスター掲示板ジャックなど都の政策とは関係ない話題で大騒ぎとなった。関連報道はいつになく盛り上がっているように見えるが、今回も投票率が大きく上向く見通しは立っていない。
近年の都知事選の投票率は、2011年に石原慎太郎氏が当選した際が57.80%。翌2012年に猪瀬直樹氏が当選した際に37年ぶりに6割超えとなる62.60%となった。しかし2014年は46.14%(舛添要一氏が当選)に落ち込み、2016年は59.73%(小池百合子氏が当選)、2020年は55.00%(小池氏が再選)となっている。
年代別に見ると「若者の投票率」が極端に低いことがわかる。前回2020年の都知事選では、70~74歳の投票率が65.53%だったのに対し、21~24歳は39.19%、25~29歳は41.89%となっている。若者の投票率はシニアより最大26ポイントも低かったのだ。
東京都選管も手をこまねいているわけではなく、若い世代に人気が高い俳優の志尊淳さんをイメージキャラクターに利用してSNS広告や動画広告を流したり、高校に“出前授業”を展開して選挙の仕組みを教えたり模擬選挙を実施したりするなど、若者に「1票」を行使してもらおうと取り組みを重ねている。
“どうせ投票に行っても行かなくても変わらない”──投票に行かない人たちにはそんな感覚があるのかもしれないが、「1票の価値」を知れば投票行動につながるのではないか。
2021年の衆議院議員選挙の際、NEWSポストセブンでは滋賀県立大学環境科学部の村上一真准教授(当時。現在は教授。行動経済学)の協力のもと、衆院選の「1票の価値」が205万円になることを報じた。
村上教授の試算のポイントは「選挙で選ばれた国会議員が責任を持つべき予算額」に着目していることだ。今回は、同様の方法で「都知事選の1票の価値」を試算してみる。
選挙は、納税者でもある有権者が候補者を選別し、自分たちが望む税金の使い方を委託するのが原則だ。そこで「有権者に選ばれた都知事が責任を持つべき年間の予算額」を算出して、その額をもとに1票の価値を導くのが村上教授の考え方のベースにある。
都知事は、予算案の作成、予算を執行する権限、議会に条例案などを提出する権限、租税等を徴収する権限など強大な権力を持つ。予算の「議決権」は都議会(定数127)にあるが、予算案を作成し執行する権限は知事にあるのだ。
国民は総理大臣を選ぶことはできないが、知事は直接選挙で選ぶことができるから、特に大規模な人口を擁する東京都の知事は“大統領並みの権力”を持つと言われる。
都の年間予算は16兆4000億円で、スウェーデンやオーストリアといった中規模国家並みの規模となっている。
そこから、都が直接コントロールできるものではない部分となる、いわゆる“借金の返済”にあたる「公債費」(約3000億円)や特別区などに配分する「税務連動費等」(約1兆7000億円)の合計約2兆円を差し引いて、約14兆4000億円が「都知事が責任を持つべき予算額」といえる。仮にこの金額が任期4年続いたとすると、4年分の総予算は57兆6000億円にも及ぶ。