スポーツ

蛯名正義調教師「スタッフだけでなく馬とも常に話をしています」 馬は人の言葉を聞いて何を感じているのか?

蛯名正義氏は馬へどう声かけしているのか

蛯名正義氏は「馬とも常に話をしています」と言う

 1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動中だ。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、馬への声かけについてお届けする。

 * * *
 ジョッキーが馬と対話をしながらレースをしている、という話は聞いたことがありますよね。

 トレセンの厩舎内でも馬に触ったり、乗って歩かせたりする時に、常に声をかけています。人間の声も調教の要素の一つなのです。声をかけることで、落ち着かせたりするわけで、こちらが思っていることを、馬が理解してくれているかどうかを判断します。

 自分の名前も認識していると思います。毎日呼ばれているし、「自分のほうを見ながら何か言ってるな」、というのを感じている。馬房の中に声をかけると、何かくれるのかなと思ってこちらに寄ってきたりします。中にはジーっと端っこに寄ったままの子もいるけれど、声をかけられたのは分かっていて、振り返ってこちらを見たりする。「なに?」みたいな感じでね。

 声がけするのは、怒られているわけではないというのを馬は理解しています。あまりナイーブになっても困るから、何気ないことも話す。こちらがそうやって話すのは、「何をごちゃごちゃ言ってるのかはわからないけれど、怖がらなくていいよ、落ち着いてよってことなんだな」というのを教えているということでもあります。話しかけるだけではなく、常に音楽やラジオを流しています。

 馬がいちばん好きなのは、体を洗ってくれたり、ご飯をくれたりする担当厩務員さん。足音が聞こえただけでわかるし、いつも厩舎にバイクで通ってくるようなら、そのエンジン音でわかるぐらいです。お腹がすいてくると「いつかな、いつかな?」って待ってるわけだし、耳慣れた音がすると「あ、来た!」ってそわそわします。

 パドックを歩いている馬が、さかんに馬を引いている厩務員さんのほうに顔を寄せているようなしぐさを見たことがあるでしょう。大勢の人の前に引き出されたりして不安で甘えているのです。「大丈夫大丈夫~」などと小声でささやいている厩務員さんもいますよ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン