自動車の「ながら運転」を防止する対策として道路交通法が改正され、反則金が普通車でそれまでの3倍に引き上げられたのは2019年12月1日からのこと。その翌年、2020年は全死亡事故に占める携帯電話使用事故の割合が前年の約半分に減少した(警察庁調べ)。いま、新しい社会問題となって久しい自転車の危険な運転を防止する目的で、警察庁は自転車の酒気帯びとスマートフォンなどを使用した「ながら運転」について11月1日から罰則つき違反とする方針を決めた。人々の生活と社会の変化を記録する作家の日野百草氏が、「自転車のスマホながら運転」についてレポートする。
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「スマホしながら自転車漕いでるのなんていっぱいいるよ、あそこにも、ほらそこにも」
都心の繁華街、しばらくぶりに会った飲食店の知人(20代)がスマートフォン片手に折りたたみ自転車で「スマホながら運転」をしていたので声をかける。
彼は自転車を対象とした自動車やオートバイ同様の「青切符」制度導入(2026年ごろを目処に施行)を知らなかった。もちろん、いまから約4か月後の11月1日から「自転車のスマホながら運転」が罰則つきの違反となる方針が決定したことも知らなかった。
「なにそれ、スマホ狙い撃ちかよ、たかが自転車だよ、こんなちっちゃいの」
彼の自転車はミニベロと呼ばれる小型の自転車で、電動アシスト機能がついているタイプだ。
「それに仕事の着信なんだから確認しないと、まずいっしょ。ちゃんと前見えてるし」
それでも危ないからとスマホはしまってもらったが、彼とのやりとりの間にもスマホ片手にイヤホンで若い女性の自転車が走り抜ける。その向こうには自転車にスマホ片手にフラフラとガニ股で漕ぐ中年男性――都内有数の歓楽街、場所が場所だけになかなかのカオス。警察官もいるがまず声掛けなんかしない。そして誰もヘルメット(努力義務)なんか被っていない。
自転車で「スマホながら運転」をする4つの目的
6月27日、警察庁は「自転車のスマホながら運転」と「自転車の酒気帯び運転」を罰則つきの違反とする方針と「11月1日から」という具体的な日付を発表した。これまで「自転車のスマホながら運転」は警告のみだった。いや、多くはそれすらされてこなかった。