岸田内閣・自民党の支持率が急落し、本来なら野党第一党の立憲民主党に「政権交代」の機運が高まるはずだが、「泉健太総理」に現実味は感じられない。これでは自民党に真の危機感は生まれないし、立憲民主党の批判ばかりの体質も変わらない。この構図こそが、日本政治の閉塞感の本質ではないか。【全3回の第2回。第1回を読む】
「万年与党」と「政権を取れない万年野党」の構造
立憲民主党代表の泉健太氏(49)なぜ、野党第一党の党首に選ばれたのか。それは立憲民主党が政権を取れるとは考えていなかったからだ。
現在の政治状況は、「ネオ55年体制」と呼ばれる。2012年総選挙以来、安倍晋三長期政権下で自民党が衆参の選挙に勝ち続け、野党は低迷。政界は自民党一強の「万年与党」と「政権を取れない万年野党」の構造が定着した。かつて55年体制と言われた自社2大政党の時代と同じだ。
そうしたなか、野党は旧・立憲民主と旧・国民民主が合併して新「立憲民主党」を結成し、前回総選挙に臨んだが、敗北した。そこで登場したのが泉氏だった。政治評論家・有馬晴海氏がその舞台裏をこう指摘する。
「立憲民主党代表選に出馬したのは泉氏のほかに、逢坂誠二氏、小川淳也氏、西村智奈美氏という軽量級の3人。国民から見たら“こんな人いたの?”と思う人たちです。新鮮味を出そうとしたと言えば聞こえはいいが、野田(佳彦・元首相)氏や岡田克也氏などかつて民主党政権の中枢を担った旧世代の大物議員たちは、ネオ55年体制になって“どうせ政権を取れない野党の代表になってもうま味はない”と出馬を見送った側面があった。つまり、泉氏は最初から“総理になるはずがない代表”として選ばれたわけです」
野党第一党が政権交代の旗頭になれそうにない党首を立てるから、自民党も安心して派閥の談合で不出来な総理を担いでも政権を維持できる。それが、55年体制的な現象なのだ。
案の定、泉代表が率いる立憲民主党は2022年参院選で敗北、昨年4月の統一補欠選挙でも衆参5選挙区で全敗した。
「政権交代を目指すのであれば、衆院選で289の小選挙区全部に候補者を立てるのが当たり前。しかし、立憲では総選挙準備を急ぐ現在も約180の選挙区しか候補が決まっていない。政権取りに本気じゃなかった証拠です」(有馬氏)