岸田内閣・自民党の支持率が急落し、本来なら野党第一党の立憲民主党に「政権交代」の機運が高まるはずだが、泉健太代表が総理大臣になることに現実味は感じられない。これでは自民党に真の危機感は生まれないし、立憲民主党の批判ばかりの体質も変わらない。この構図こそが、日本政治の閉塞感の本質ではないか。【全3回の第3回。第1回を読む】
“泉おろし”が始まる不毛
自民党一強の「万年与党」と「政権を取れない万年野党」立憲民主党の構造が定着してきた中で、自民党の派閥の裏金問題が持ち上がり、思わぬ追い風が吹いた。岸田文雄・首相の支持率も自民党の支持率も大幅に下がり、国民のなかから「政権交代」の声が出始めた。
立憲側では、「政権」が近づいたように見えると、旧世代の大物議員たちがにわかに野心を燃やし始めた。
国会で裏金問題追及の先頭に立ったのが元首相の野田佳彦氏だ。首相経験者は慣例としては国会質問に立たないものだが、野田氏は「一兵卒になる」と予算委員会の質問に立ち、さらに政治改革特別委員会の委員まで務めて出番をつくった。
「今や国会追及は野田さん、党運営は岡田克也幹事長、国会対策は安住淳・国対委員長が全部取り仕切って泉代表は霞んでしまった。参院選で負けた後、泉さんが起用した役員が全員交代させられ、岡田幹事長ら旧世代が党を握ったからです。泉代表は傀儡にされている」(泉支持の立憲議員)
立憲民主党では自民党と同じく今年9月に代表選が行なわれる。そこには野田氏、枝野幸男氏ら旧世代の大物たちの出馬が有力視されている。野田支持派の議員がこう言う。
「うちの党が政権を担うには、日本維新の会、国民民主党との連立が必要になる。その時、軽量の泉代表では舐められてしまう。総理経験者の野田さんが代表になって『連立に参加してほしい』と頭を下げれば、維新も国民も説得できる」
玄葉光一郎・元外相元外相の「野田さんが今一番、求められている」という発言も、代表選での“泉おろし”をにらんだものだと党内で受け止められているのだ。
だが、泉支持派は彼らの打算を見抜いている。
「野田さんや枝野さんたち旧世代は、政権交代の可能性が出てきたから、“泉に総理の座をくれてやるのは惜しい”と考えているんでしょう。彼らが出馬すれば泉さんの出馬が難しくなるが、保守の野田さんと左派の枝野さんが代表選で戦えば、内ゲバで党がまた分裂含みになってしまう」(前出の泉支持の立憲議員)