ライフ

【間違った減薬を避けるために】気をつけるべきは「精神科で処方される薬」、薬はいらないと喧伝し患者を呼び込む“減薬ビジネス”も横行

「必要な薬を必要な分だけ」飲むのがポイントだ(写真/PIXTA)

「必要な薬を必要な分だけ」飲むのがポイントだ(写真/PIXTA)

 病気を治すためにのんだはずの薬だが、「のみすぎ」によってかえって体を悪くしてしまうこともある。適切な量の薬を服用するために、減薬は重要だが、間違った減薬はのみすぎと同じくらい害悪にもなる。やめるべきできではない薬もあるのだ。適切な減薬のために重要なことを専門家に聞いた。【前後編の後編。前編から読む】

 優先順位をつけ、ステップを踏んで行う減薬が有用である一方、服用をやめることが“毒”になる薬もある。医療法人社団こころみ理事長で精神科医の大澤亮太さんが言う。

「特に気をつけるべきは精神科で処方される薬です。無理に減らせばめまいや頭痛など離脱症状が出るものもあります。精神科に限らず、減薬は知識と経験を持った専門家でなければ難しいが、最近は“薬はいらない”と喧伝して患者を呼び込もうとする“減薬ビジネス”も横行している。安易に薬をやめさせ、その代わりに高額な自由診療をすすめるクリニックすらあるのです」

 大澤さんが声を大にして警鐘を鳴らすのは、「減薬ビジネス」の餌食になり、症状が悪化した患者を目の当たりにしたからだ。

「服薬治療で幻覚・幻聴などの症状が安定していた統合失調症の患者さんが、減薬をやみくもにすすめる自由診療のクリニックにかかって薬をやめた結果、再発したことがありました。

 統合失調症は難しい病気ですが、最近はよい薬が開発されているので、しっかり服用すればコントロールできます。しかし途中で薬をやめると、1年以内に7〜8割が再発する。症状がぶり返すと、残念ながら完全な回復は難しくなります」(大澤さん)

 精神科の薬に限らず、治療が困難な病気の症状や進行を抑えている薬も、減らすことで体が蝕まれていく。愛知医科大学地域総合診療医学寄附講座教授の宮田靖志さんが言う。

「代表的なのは、パーキンソン病や心不全の薬です。それらの病気の症状は服薬しているからこそ抑えられている。やめると悪化し、命にかかわるケースすらあります」(宮田さん)

 減らすことが重篤な状態を引き起こす可能性のある薬に加え、北品川藤クリニック院長の石原藤樹さんは「リバウンドのある薬」の減薬も慎重にすべきだと話す。

「精神安定剤や睡眠薬などは、急にやめると反動で症状が悪化することがあります。エストロゲンなど、更年期障害の治療時などに処方されるホルモン剤も同様です。減薬は年齢や症状、本人の意思などを総合的に判断して取り組んでいくもの。減らす対象になる“必要のない薬”は一人ひとり違うのです」

 そのため、副作用などのリスクが懸念される薬であっても、自分にとって症状を緩和するために手放せないのであれば無理にやめる必要はない。

「例えば『刺激性の便秘薬は依存性があるからよくない』とよくいわれていますが、いざ薬をやめて“出ない”状態が続くのは苦しいし、便秘もひどければ腸閉塞で命を落とす危険がある。副作用に注意しながら様子を見つつ服用するのもひとつの選択肢だといえます」(石原さん)

関連キーワード

関連記事

トピックス

SNSで出回る“セルフレジに硬貨を大量投入”動画(写真/イメージマート)
《コンビニ・イオン・スシローなどで撮影》セルフレジに“硬貨を大量投入”動画がSNSで出回る 悪ふざけなら「偽計業務妨害罪に該当する可能性がある」と弁護士が指摘 
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、入学式で隣にいた新入生は筑附の同級生 少なくとも2人のクラスメートが筑波大学に進学、信頼できるご学友とともに充実した大学生活へ
女性セブン
漫画家・柳井嵩の母親・登美子役を演じる松嶋菜々子/(C)NHK 連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合) 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
松嶋菜々子、朝ドラ『あんぱん』の母親役に高いモチベーション 脚本は出世作『やまとなでしこ』の中園ミホ氏“闇を感じさせる役”は真骨頂
週刊ポスト
都内にある広末涼子容疑者の自宅に、静岡県警の家宅捜査が入った
《ガサ入れでミカン箱大の押収品》広末涼子の同乗マネが重傷で捜索令状は「危険運転致傷」容疑…「懲役12年以下」の重い罰則も 広末は事故前に“多くの処方薬を服用”と発信
NEWSポストセブン
『Mr.サンデー』(フジテレビ系)で発言した内容が炎上している元フジテレビアナウンサーでジャーナリストの長野智子氏(事務所HPより)
《「嫌だったら行かない」で炎上》元フジテレビ長野智子氏、一部からは擁護の声も バラエティアナとして活躍後は報道キャスターに転身「女・久米宏」「現場主義で熱心な取材ぶり」との評価
NEWSポストセブン
人気のお花見スポット・代々木公園で花見客を困らせる出来事が…(左/時事通信フォト)
《代々木公園花見“トイレ男女比問題”》「男性だけずるい」「40分近くも待たされました…」と女性客から怒りの声 運営事務所は「男性は立小便をされてしまう等の課題」
NEWSポストセブン
元SMAPの中居正広氏(52)に続いて、「とんねるず」石橋貴明(63)もテレビから消えてしまうのか──
《石橋貴明に“下半身露出”報道》中居正広トラブルに顔を隠して「いやあ…ダメダメ…」フジ第三者委が「重大な類似事案」と位置付けた理由
NEWSポストセブン
小笠原諸島の硫黄島をご訪問された天皇皇后両陛下(2025年4月。写真/JMPA)
《31年前との“リンク”》皇后雅子さまが硫黄島をご訪問 お召しの「ネイビー×白」のバイカラーセットアップは美智子さまとよく似た装い 
NEWSポストセブン
異例のツーショット写真が話題の大谷翔平(写真/Getty Images)
大谷翔平、“異例のツーショット写真”が話題 投稿したのは山火事で自宅が全焼したサッカー界注目の14才少女、女性アスリートとして真美子夫人と重なる姿
女性セブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《中居氏とも密接関係》「“下半身露出”は石橋貴明」報道でフジ以外にも広がる波紋 正月のテレ朝『スポーツ王』放送は早くもピンチか
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
〈不倫騒動後の復帰主演映画の撮影中だった〉広末涼子が事故直前に撮影現場で浴びせていた「罵声」 関係者が証言
NEWSポストセブン