松阪牛、神戸牛、飛騨牛……日本国内で大切に育てられた「和牛」は、いまや世界的なブランド。だがひと口に「日本の牛」といっても世界が認めるブランド牛から、健康被害のリスクのある“国産牛”までさまざま。「国産だから安全」とは、もう言えなくなっている現実がある。【前後編の前編。後編を読む】
日本国内で育てられてもえさが国産であることはまれ
《神戸牛のシャトーブリアン10万円》《牛ステーキ串1万2000円》──歴史的な円安が追い風になり、訪日外国人観光客数は3か月連続で300万人超の過去最多を記録している。日本を訪れる観光客から特に人気を集めているのが「和牛グルメ」で、ステーキハウスや焼き肉店はインバウンド需要に沸いている。
多少値段は張るものの、おいしくて高品質で、何より安全──「日本産の牛肉」は国内外から絶大な信頼を集め、私たち日本の消費者でも「国産牛」を選ぶことには特別感を感じている人が多いだろう。しかしいま、その神話は崩れかけている。
懸念点として多くの専門家が指摘したのが、牛が食べる「えさ」のリスクだ。立命館大学生命科学部教授の久保幹さんが明かす。
「たとえ日本国内の牧場で育っていても、その牛が食べているえさまで国産であることはまれです。国内の一部のブランド牛などを育てる牧場では、国内でつくられた有機栽培のえさを与えて大切に育てているそうですが、それ以外の国産牛が食べているえさは、ほぼすべてがアメリカなど外国産トウモロコシをはじめとする輸入飼料です。
船で長い時間をかけて赤道下など暑い地域を通過して運ばれてくるため、カビが生えることもある。日本に着く頃には劣化していることも少なくないでしょう」