炎鵬に特例は適用されるのか
炎鵬はこのままでは年寄株を襲名して親方として協会に残ることができないわけだが、角界には「寶千山ルール」と呼ばれる“特例”もある。協会関係者が説明する。
「『関取在位28場所以上なら保証人を立てて、名跡の保有者、師匠の願書があれば理事会で(襲名の)是非を決定する』というもので、過去に寶千山(現・立田川親方)と天鎧鵬(現・北陣親方)が特例で親方として残っている。
炎鵬にも特例適用の可能性があるが、過去の適用ケースはいずれも保守本流の出羽海一門。弱小一門で執行部から目をつけられている旧宮城野部屋では理事会で認められないだろうし、その前に白鵬でも取得に苦労した年寄株を手に入れるのも難しいのではないか」
幕内経験者が序ノ口まで番付を下げた後に関取復帰を果たせば史上初となるが、これも厳しいという見方がある。若手親方のひとりはこう言う。
「相撲協会は首のケガにナーバスになっている。2021年3月場所で三段目の力士が取組中に首を負傷して緊急搬送後、病院で亡くなった。協会では審判規則を変更して脳震盪などで相撲が取れないと判断すれば不戦敗などにして、首に持病を持っている力士には休場を勧めるなど厳しく対処している。部屋で稽古も満足にできない炎鵬は土俵に上がれないのではなく協会が上げないのだとも言われている」
旧宮城野部屋の力士たちのリーダー的な存在は石浦と炎鵬という2人の元関取だった。石浦は引退して部屋付き親方に就任したが、もう一人のリーダーである炎鵬が引退となれば旧宮城野部屋の結束が一気に崩れる懸念もある。
相撲協会では一門の理事である浅香山親方(元大関・魁皇)と伊勢ヶ濱親方から、宮城野親方の状況報告を受け、旧宮城野部屋の閉鎖を継続することを決めている。
「6月14日には超党派の“大相撲の発展を求める議員連盟(議連会長・平沢勝栄)”が総会を開き、部屋が閉鎖となり伊勢ヶ濱部屋へ転籍した宮城野親方の処分解除の要件などを提示すべきと協会側に申し入れています。ただ、この申し入れによりすぐに事態が大きく動くとは考えにくいのではないか」(前出・相撲担当記者)
旧宮城野部屋をめぐる問題は、今後どのような展開を見せるのか。
※週刊ポスト2024年7月19・26日号