自民党に情勢調査について聞くと、「そうした件については、ご回答していません」(選挙対策本部事務局)とするのみだが、その後、岸田首相が通常国会会期末の解散・総選挙を断念したとの報道が流れた。その判断には、「党の極秘調査の結果が影響した」とも言われている。「現職総理の落選」は過去一度もないが、現状を鑑みるとあり得ない話ではないという。
選挙分析に定評がある政治ジャーナリストの野上忠興氏はこう分析する。
「岸田首相が無党派層の多い都市部の広島1区で圧勝を続けてきたのは、有力な対立候補がいなかったからです。しかし、今回は裏金批判で全国的に自民支持層が自民離れを強めており、公明票も入りにくい。状況は岸田首相も同じか、もっとひどい。次の総選挙で広島1区に有力な対立候補が出馬して事実上の一騎打ちの構図になれば、強い候補と戦った経験がない岸田首相が有効な手を打てるとは考えにくい。現職総理が追い詰められ、小選挙区で敗れる可能性はあるでしょう」
支持率は低くても、現職総理の地元は「おらが総理」を贔屓(ひいき)するものだ。
だが、広島を取材すると、「岸田王国」に明らかな異変が起きていた。
(第2回に続く)
※週刊ポスト2024年7月19・26日号