現職総理に遠慮するそぶりもなく自民党内から次々と「ポスト岸田」に名乗りを挙げる現状は、総理大臣の専権事項である「伝家の宝刀」衆議院の解散権を岸田文雄・首相が行使できなかったことに端を発する。それもそのはず、有権者の深刻な自民党離れは、総理の地元・広島1区にまで及び、次の総選挙での岸田首相落選の可能性まで囁かれている。そして、次の自民党総裁選はどうなるのだろうか──。【全3回の第3回。第1回から読む】
総裁選出馬を断念する時
解散・総選挙を封じられた岸田首相。自民党内では、反主流派の菅義偉・前首相が「岸田おろし」の号砲を鳴らし、茂木敏充・幹事長、石破茂氏、河野太郎氏らが総裁選出馬に動き出した。
焦った岸田首相は関係が悪化していた後見人の麻生太郎・副総裁と立て続けに2回会談し、必死に修復をはかった。
官邸関係者からは、「党内の空気が全く読めない総理もさすがに自分が置かれている状況をわかっている。メンタルはボロボロで、最近は抜け毛がひどいらしい。気丈なふりをしているが、ポッキリ折れるかもしれない」との声が聞かれる。
政治ジャーナリストの藤本順一氏は、「突然の退陣表明」はあり得ると指摘する。
「注目すべきは安倍元総理の3回忌での岸田首相の言動です。SNSに〈安倍さんから引き継いだ『志のバトン』をしっかりと次の世代に引き継いで参ります〉と投稿した。後継を念頭に置いているように読める。これまでそんな素振りを見せたことはなく、心境の変化がうかがえる」
政権の命運が決まるのは8月だと見る。
「麻生さんは岸田首相が『総裁選には出ない』『辞める』と言うまでは支えるでしょうし、岸田さんも外交や経済指標の好転に一縷の望みを託しているようですが、国会閉会で解散は打てず、内閣改造もままならない状況に追い込まれて8月には否応なく出処進退が迫られることになる」(同前)
3年前、当時の菅首相は総裁選が迫るなか、支持率低下で解散も内閣改造も封じられ、出馬断念に追い込まれて退陣した。
地元有権者からも見捨てられた岸田首相にも、決断の時が迫っている。
(了。第1回から読む)
※週刊ポスト2024年7月19・26日号