池田組と絆會がかつて所属していた神戸山口組の井上邦雄組長(時事通信フォト)

池田組と絆會がかつて所属していた神戸山口組の井上邦雄組長(時事通信フォト)

「ヤクザは推測で有罪」がスタンダードになる

 池田組は山口組分裂直後の2016年5月31日、当時の若頭が弘道会のヒットマンによって射殺され、それ以後もことあるごとに狙い撃ちになってきた経緯がある。池田組による弘道会への報復を友好団体である絆會が請け負い、捨て身になった若頭が長田のラーメン店で弘道会直参組長を殺害したのではないか。その痕跡が登記簿謄本に記されているという見立ては、さほど不自然でもない。

 トップ2人を微罪で逮捕した大阪府警も、当然、1億円の抵当が抹消されたのは、ヒットマン業務の報酬ではないのか追及するとみられる。が、あくまで状況証拠と推認を重ね合わせた予断に過ぎず、当事者が否定すればそれ以上の追及は難しい。ヤクザとしての評価は逮捕後の沈黙にある。トップクラスの組長や、金澤容疑者らが自供する確率はほぼゼロだ。そもそもゲスの勘ぐりかもしれない。隠したい事情があるのに、こんなにも分かりやすい裏付けを残すだろうか。

 逮捕は出来ても、それ以上の捜査は難しい。警察はもしかすると、2018年に施行された協議・合意制度を利用してくるかもしれない。これは日本版の司法取引で、真実の供述や証拠収集に協力することで、減免・免責する制度である。主犯格当人はどんな取調べにも応じず黙秘を貫徹したとしても、事件の協力者たちすべてが沈黙を通せるはずはない。現在、暴力団抗争事件での量刑は極めて重く、ヒットマンを現場に運んだ運転手さえ、懲役20年になるから、司法取引は大きな武器になるだろう。

「年季の入った幹部クラスならともかく、半グレのようなお兄ちゃんたちが、減免をちらつかされて喋らないはずはない。ひとつ穴が開いたらそこを突破口に組織的殺人での立件を狙ってくるはず」(六代目山口組と友好関係にある独立組織幹部)

 そのため暴力団たちは、今回の逮捕劇の行く末にひどく注目している。そこには工藤會トップの裁判でくだされた第一審……その後破棄された推認での死刑判決のように、推測で事実を繋げられ、有罪となる事件がスタンダードになりかねないという危惧がある。

「そうなればもはや抗争事件は起こせない。通常ならあり得ない話でも、長期化した山口組の分裂抗争を打開するために、警察が新しい武器になる捜査手法を試してくる可能性はある。それが成功したら、どの暴力団にとっても死活問題だ」(同前)

 暴力団にとって、今回の事件は、対岸の火事ではない。
■取材・文/鈴木智彦(フリーライター)

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