デビュー当時の宮沢りえ

デビュー当時の宮沢りえ

 まず、1つめは、実の母がプロデューサーだったこと。昭和の大スター・美空ひばりさんも、お母さんがプロデューサーを務め、二人は結婚するまで片時も離れたことはなく、打ち合わせたわけでもないのに同じ意見なことから“一卵性母娘”と呼ばれていました。母と娘はお互いの考えていることがわかるため、他人が入り込めないほどの強固な信頼関係で結ばれることもありますが、娘が大人になり、母親から自立をしようとすると、問題が起きてきます。

 ひばりさんはお母さんの反対を押し切って、俳優・小林旭さんと結婚しますが、うまくいきませんでした。後にひばりさんのお母さんは「私にとって不幸だったのは、ひばりが結婚したとき。また幸せだったのは、離婚したとき」と言ったそうですが、娘が母の思うように動いてくれなくなったときに生じる確執は、他人とのそれよりも深刻化する可能性があるのではないでしょうか。

 2つめは、りえさんが自分から積極的に肌をさらしていったことです。16歳のときの「ふんどしカレンダー」や、18歳のときのヘアヌード写真集『Santa Fe(サンタフェ)』などで話題をさらっていったりえさん。大人になる前の美少女だけが持つ神聖を表現したかったのかもしれません。当時、りえさんはルーツ的に太りやすいはず、だから、若いうちに脱いだのだとか、自分の娘をハダカにしてもうけようとするなんてひどい母親だと書いた週刊誌もあったと記憶しています。

 根拠も不明で今の価値観で言うのならアウトな論調だと思いますが、ここから女性は若いほど価値が高いという当時の価値観が透けて見えてくる気がしますし、そういう時代の空気を一番感じ取っていたのは、りえさんのお母さんではないでしょうか。いずれにしても写真集は大ヒットを記録、写真集を企画したりえさんのお母さんが名プロデューサーであることが証明された形となりました。

 そんなりえさんは、19歳という若さで貴乃花(当時は貴花田)光司さんとの婚約を発表しています。力士と結婚するということは、暗黙の了解としておかみさんになるということ。当然、芸能界を引退すると思われましたが、翌年に婚約解消が発表されます。

 その理由について、美川憲一さんが2014年10月16日放送の『ノンストップ!』(フジテレビ系)において、結婚を思いとどまるように説得したのは自分だと告白したのです。美川さんはりえさんのお母さんと親しかったそうですが、「りえがおかみさんなんてありえない。りえを説得して」と頼まれ、「あなたが光子(筆者注:りえさんのお母さんのこと)の子どもに生まれたのは宿命だと思って。私も2人の母親の面倒を見ている。あなたが嫁に行ったら、誰がお母さんの面倒を見るの? もう1回考え直して」と説得すると、りえさんは泣いていたそうです。

婚約会見に臨む、貴花田関(現・貴乃花光司氏)と宮沢りえさん1992年11月27日(時事通信フォト)

婚約会見に臨む、貴花田関(現・貴乃花光司氏)と宮沢りえさん1992年11月27日(時事通信フォト)

 貴乃花さんと結婚することと、お母さんの面倒を見ないこととイコールではないと思いますが、いろいろ事情があったのでしょう。結局のところ、ひばりさんのお母さんと同様に、りえさんのお母さんも娘を手離したくなかった、一緒に芸能活動をしたかったのではないでしょうか。お母さんの願いどおり、婚約を破棄したりえさんですが、その後は激ヤセしてしまい、芸能活動がままならない時期もあったのでした。

 しかし、スターというのは、そう簡単に負けない星の下に生まれついているのではないでしょうか。りえさんは舞台に進出、30歳のときに「今後10年、舞台の依頼は断らない」と決心したそうです。これが3つめです。

 映画やドラマといった映像の世界では、撮り直しがききますが、舞台はそうはいきません。観客も毎日同じではありませんから、同じお芝居をしても反応は異なるでしょうし、自分や共演者のコンディションも毎日違うもの。つまり、毎日が「無二の1回」もしくは「一期一会」と言えるわけで、いいお芝居をするためには健康管理や集中力の維持など、徹底した自己管理能力が求められるのではないでしょうか。

 2013年、りえさんは心筋梗塞のため降板した天海祐希さんの代役を引き受けます。代役が決定してから2日半、稽古時間は25時間という過酷な条件でしたが、プレッシャーに打ち勝ち、完璧に演じ切ったりえさんに観客は総立ちとなって拍手を送ったそうです。りえさんに舞台女優としての資質があり、努力する才能もあったとは、名プロデューサーと呼ばれたりえさんのお母さんですら、予想がつかなかったことかもしれません。

りえさんがスターになったのは生まれついての美貌と天真爛漫さ、そしてお母さんの常識にとらわれないプロデュース能力の賜物と言えるでしょう。一方で、人はいつまでも若くいられません。特にりえさんのような一世を風靡した人ほど、外見の変化について取りざたされてしまうもの。しかし、りえさんが築き上げた舞台女優としての地位は、時が経っても失われることはないでしょう。りえさんがエイジングに肯定的なのは、今の自分を時間をかけて作り上げたという自負があるからなのかもしれません。

エイジングを当たり前にとらえるスタンスに共感

 りえさんは現在51歳ですが、最近、50代の女性芸能人の“あり方”が変わってきたと感じています。石田ゆり子さん(54歳)、飯島直子さん(56歳)や渡辺満里奈さん(53歳)など、一世を風靡した人たちが、更年期障害や閉経を、真面目に語るようになってきたのです。ひと昔前は、美人女優と言われる人ほど、特別な美容法はない、ダイエットもしていないと言うなど秘密主義を貫いており、更年期なんてもってのほかでした。

宮沢りえ

50代女性から支持を集める宮沢りえ

 しかし、現代は美しい女優たちがオープンにするからからこそ、より多くの人が耳を傾け、共感される時代に突入したのではないかと思うのです。それでは、なぜこのお三方がこれまで一種のタブーとされていた更年期などを語るかというと、「女性が更年期障害を迎えるのは当然のこと」という思いがあるからではないでしょうか。りえさんと同じく、エイジングを肯定的に受け止めているのだと思います。

 考えてみると、50代というのは面白い年代なのかもしれません。ライフスタイルが多様化してくると、環境が違うために、仲が良かった人とも話が合わなくなるという経験をしたことがある人は多いことでしょう。10代の頃は友達と好きなアイドルの話で盛り上がれたのに、そうはいかなくなってきます。しかし、更年期などを含めたエイジングは程度の差はあれ、すべての女性が経験することで、大人の女性にとって数少ない“共通言語”なのかもしれません。

 50代になると、子育ても徐々に終わりに近づき、自分の人生を考える女性も少なくありません。そういう意味では、50代というのは「もう1つの思春期」なのでしょう。10代のときは若さのきらめきで人々を魅了し、50代の今はエイジングを肯定しつつ、ナチュラルな美しさで共感を得る。やはり、今も昔も、とくに2回目の思春期を迎える世代にとって、りえさんは燦然と輝くスターなのだと思います。

◇仁科友里/フリーライター。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ』(主婦と生活社)。

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