「いつも旦那さんとふたりで出かけるところばかり見かけていて……。4人家族だってニュースで聞いて『えっ?』となったんですよね」──幼い命が失われてしまった。7月10日、0歳児の長男を殴るなどの暴行を加えたうえで死亡させたとして20代の母親が逮捕された事件。現場となったアパートの住民は、冒頭のように証言した。全国紙社会部記者がこの事件について解説する。
「傷害と傷害致死で逮捕されたのは無職の野中千宙容疑者(26)。2023年7月26日に容疑者本人から『(長男が)布団の中で冷たくなっている』と通報があり、警察が船橋市内の自宅アパートに駆けつけた。長男である千巴弥(ちはや)ちゃんは病院に運ばれましたが、その日の夜に脳損傷により死亡。捜査関係者によると暴行は同年3月から7月の間に行われ、本人も『ストレスで頭にきて平手で殴って床に投げてしまった』と容疑を認めている。
逮捕された10日の夜には、千葉県が管轄する市川児童相談所が会見を開き、千巴弥ちゃんが生まれた当時に、容疑者の家庭で育児放棄(ネグレクト)の恐れがあると判断していたことを明かしています」
船橋市の前には、千葉市に住んでいた野中容疑者一家。まだ生まれたばかりの長男を支援していた千葉市西部児童相談所の桐岡真佐子所長は容疑者一家の経緯についてこう語った。
「2022年の8月に『妊婦健診を受けていないお母さんがいる』と病院から通報があり、亡くなった男の子が生まれる前からネグレクトの疑いありと認知しておりました。赤ちゃんが安全に育つ環境を整えるべきだと判断し、8月25日に男の子が生まれてすぐ“一時保護”という形でお預かりすることになった。
保護をしてからはお母さんと赤ちゃんに面会をしてもらったり、家庭訪問してお宅の様子を見たりとか、あとは電話や面接でご両親の考えや生活の様子などを聞いて、経済状況を含めていろんな部分を確認し、赤ちゃんにとって安全な環境が整っているか情報収集を進めました。お母さんと関わるなかで『どういうふうに抱っこしたら泣き止むか』『いつミルクを与えるか』といったごく普通の母親としての悩みはあったように見受けられましたが、特に異常な言動などはありませんでしたね。そうしてお家での暮らしを体験させる外泊などをしながらお家に帰る準備をしていただいて、昨年の4月12日に保護の解除に至りました」