7月13日に起きた、トランプ前大統領を狙った銃撃事件。現場となった、ペンシルベニア州で行われた集会場での警護体制が問題となっている。すでに現地報道などでは、トーマス・クルックス容疑者(20)が、ステージに向かって左側にある建物の屋根の上から約130メートル離れたトランプ氏を狙ったことがわかっている。
CNNなどによると、クルックス容疑者は事件当日の朝に地元の銃砲店で銃弾50発を購入。また、ホームセンターでハシゴを買っていたという。ライフル銃はクルックス容疑者の父親が購入したもので、殺傷能力が高い半自動小銃だったことが判明。当日は「射撃場に行きたい」と言って父親から銃を借りたという。
SNSでは、事件直前に容疑者がステージから離れた屋根の上に登り、銃を構えて伏せている様子の動画が投稿されて話題となった。その不審な様子に気づいた人も複数いて「避けられた銃撃だったのではないか」と問題になっているのだ。
投稿された動画の一つには、〈plenty of time and opportunity to eliminate the threat WTF〉(脅威を排除するには、十分な時間と機会があった。なってこった)と、スラングを交えたテロップが載せられていた。その動画では、茶色の壁の建物の屋根に容疑者と思われる人物が登っている様子が映し出され、複数の人が屋根の上に注目していることが伝わってくる。
現地ジャーナリストによると、現場では銃撃後に「犯人は屋根の上にいる!」「(容疑者がいる)建物のほうに行くな!」などといった叫び声が飛び交ったという。
BBCは、聴衆のひとりの証言として、「犯人が建物の屋上に登っているのを目撃し警察とシークレットサービスに伝えようとしたがうまく伝わらなかった」という話を報じた。また、地元局のWPXIは「発砲の約30分前に警察が容疑者に気づいていた」と伝えている。
アレハンドロ・マヨルカス国土安全保障長官はCNNの取材に対し、「(警備の)失敗」「二度と起こってはならない」と語っているが、なぜ、犯人の存在に気づきながら事件が防げなかったのか。前出の現地ジャーナリストはこう解説する。
「現在わかっているのは、容疑者がいた建物はシークレットサービスが担当する会場の中ではなく、その外側にあり、地元警察が警備を担っていた場所だったということです。現地では、地元警察が危険を把握してから警護を担当する全員に情報が伝達するまでには10秒以上かかるとされる報道も出ています。いずれにしても、地元警察とシークレットサービスの間で情報共有・伝達がうまくいっていなかった可能性があります」
事件については、FBI(米連邦捜査局)が中心となって捜査を進めている。容疑者の動機に加え、事件が防げなかった理由に注目が集まりそうだ。