訪問先でのお召し物がたびたび注目を集め、ファッション業界では“佳子さま売れ”という現象も起きているプリンセス。しかし、国際親善の舞台では、庶民的なスタイルも時に誤解を生む可能性があるという。直近の訪問先となったギリシャの専門家が緊急提言。
秋篠宮家の次女・佳子さまが、日本とギリシャの外交関係樹立125周年及び日本・ギリシャ文化観光年を記念して、同国を公式訪問されたのは、今年5月のこと。多忙の合間を縫って、訪問前にギリシャ文化を学ばれた佳子さま。その際、ご進講を担当した専門家のひとりである共立女子大学名誉教授の木戸雅子氏は「まっすぐに物事と向き合って、とても誠実で素直な方だと感じました」とお人柄の印象を振り返る。
木戸氏の専門分野は西洋美術史やビザンティン美術(4~15世紀にかけてコンスタンティノポリスの宮廷を中心に繁栄した、東ローマ帝国の芸術様式)。現代ギリシャ語教育にも長年携わっており、2007年からは、佳子さまが今回訪問されたファネロメニ修道院の壁画の修復に取り組んだ実績を持つ。その功績により、2021年にはギリシャ政府から勲章も授かった。ギリシャ研究の第一人者である木戸氏がご進講の様子を述懐する。
「ご進講は約3時間半。前半はビザンティン、中世ギリシャ美術の話をして、後半はファネロメニ修道院の壁画を修復した意味とその価値、修復までの経緯や現地での評価まで、200枚のスライド資料を用意して説明しました。私が研究している中世の美術分野は日本では認知度が高いとは言えません。そのため、ご訪問先のファネロメニ修道院の存在価値や文化的な背景を一から詳しくお話ししたのです。
大学の講義2コマ分にもなる内容を休みなしに聴かれたことになりますが、佳子さまはきちんと聴いてくださり、的確な質問もしてくださった。佳子さまがどれだけ努力されているかを目の当たりにしました」(木戸氏・以下同)
長時間の“講義”中、熱心にメモをとられていたという佳子さま。木戸氏は最後に投げかけられたご質問に、自身の話が届いている手応えを感じたそうだ。
「ファネロメニ修道院の壁画は、仏教の曼荼羅のように、教会の宇宙観を表現していて、表現上もどこか通じるところがあります。一般的に馴染み深いルネサンス美術や古代ギリシャ美術とは様式が異なります。
しかし、現代のギリシャ人にとっては、それこそが伝統的な『美しさ』であり、精神の基盤になっている。佳子さまにもご自身の目で見て体感してきてほしいということをまとめの話として申し上げました。佳子さまからは“ギリシャ人の美意識がどこにあるのか”という点をもう少しお話を伺いたいとの質問があり、私としては言いたいことが伝わっていると感じました」
実際、ギリシャ訪問2日目に修道院を訪れた佳子さまは、「なにか温かい気持ちになりますね。だから信者の方たちがお集まりになるんですね」と、その場で体感したご感想を述べられた。ただ、そうした佳子さまの公務に対する献身の一方で、宮内庁の情報発信には物足りなさも感じたという。
「佳子さまの修道院ご訪問時には、ギリシャの現地メディアの取材がありませんでした。日本のお金で、ギリシャ人の精神に大きくかかわる文化財を日本人が主導して修復、再生させたという事業がある。ギリシャと日本はそうした文化交流をしていて、そこに日本のプリンセスが訪ねてきたとアピールする格好の機会だったのに、現地での取材がなかったのは残念でしたね」