7月26日から開幕するパリ五輪で、JOC(日本オリンピック委員会)は日本選手団の目標として「金メダル20個」を掲げた。なかでも日本競泳界の顔として期待のかかる「明るいエース」の直前練習に密着してきた。
「東京五輪の時は、まだ学生だった“ガキンチョ”が、ただただ速く泳ぎたいと思っていたというか。銀メダルは棚からぼた餅で、まさかの結末でした。あれから3年、いまはメダリストとしてのプライドもありますし、経験も積んできました」
競泳・日本代表の本多灯(22・イトマン東進)には金メダルしか見えていない。初出場した2021年の東京五輪では、200mバタフライで銀メダルを獲得し、競泳男子として唯一のメダリストとなった。その後も国際舞台で存在感を発揮し続けた本多は、今年2月のドーハ世界選手権にて同種目で自身初の金メダルを獲得するなど、2度目の五輪を前に日本競泳界の新エースとして期待を集めている。
大会が迫ってくるなか、コンディションは堅調という本多。大舞台にめっぽう強い強心臓の彼は、「あとは本番でいかにスイッチを入れられるか」と腹を括っている。
「得意のキックを磨き、最後の最後でどう勝ち切るかということを思い描きながらやってきました。目標は1分51秒台。まだ1分52秒台を1度しか出していないので、めちゃくちゃ難しいのはわかっています。でも、自分のなかで(泳ぎの)力感は掴んでいるつもり。それを当日どう出せるか。そうなると、いちばん大事なのはメンタルかなって思っています」
本多の自己ベストは1分52秒70。3年前の東京五輪で2秒48もの差を付けられた200mバタフライ世界記録保持者のクリシュトフ・ミラーク(ハンガリー)と持ちタイムで2秒以上の開きがある。2月の世界選手権では直接対決が実現しなかったが、パリ大会での激しい首位争いは必至だ。
もう一人、強敵となるのが地元フランスの新鋭レオン・マルシャン。2023年の世界選手権で200mバタフライのほか、2つの個人メドレーを制して3冠を果たした。
「2人はライバルであり、憧れの存在。彼らと一緒に泳げることは楽しいし、彼らがレースに出ると、どれくらいのタイムで泳ぐのか気になります」