本誌が取材した「最強の歯科医」

本誌が取材した「最強の歯科医」

3つの補綴の治療は一長一短

 失った歯を補う方法は、大まかに分けて3つある。「入れ歯」「ブリッジ」そして「インプラント」だ。

 入れ歯は、失った部分に装着し、残っている歯にバネをかけて固定する「部分入れ歯」と、すべての歯を失った場合に使用する取り外し式の「総入れ歯」に分けられる。入れ歯とブリッジは特別な材料を使わない限り原則的に保険が広く適用され、3割負担の場合、治療費は5000円から高くて数万円で済む。これに対して、インプラントは保険が適用されないため、1本40万〜70万円と高額だ。

 ただし、インプラントは一度処置をすれば生涯にわたって使い続けられる可能性もあり、「自分の歯と同じように噛める」とされている。歯科医師からそうすすめられて「高いけれどインプラントにしよう」と思う人もいるだろう。だが、“一生もの”であるがゆえ、慌てて決めれば後悔につながる。

 どれが自分に合っているのか、まずは情報を集めてから決断してほしい。「それぞれに一長一短がある」と話すのは、大塚歯科医院理事長の大塚勇二歯科医師だ。

「入れ歯はブリッジやインプラントと比べ、しゃべっている途中に外れやすい、見た目が悪い、食べかすが挟まるといった問題点があります。また、噛む力も6割程度に落ちるので、食事の際、多少苦労するのは否めません。

 ただ、残っている歯をほとんど削る必要がなく、型を取るだけで作ることができるため、治療にかかる負担は少ない。また、歯ぐきに吸着する形で固定されるため、ブリッジに比べ残った歯にも負荷がかかりづらい。なにより治療費が安く済むケースが多いのが、最大のメリットです」

 これに対し、ブリッジとインプラントは安定性が高く、食べる場合の不自由も少ない。だがやはり、それぞれデメリットがあるという。大塚歯科医師が続ける。

「歯を1本だけ失った場合にはブリッジにするケースが最も多いのですが、一度作れば特別な手入れが不要で、見た目もきれいです。ただし、ブリッジを支えるために失った歯の両隣の歯を削る必要がある。加えてそれまで3本の歯で受けていた加重を2本で受けることになるので、残った歯にかかる負担はいちばん大きい。

 一方、インプラントは欠けた歯が生えていた場所のみで治療が完結するので、周囲の歯への負担はほとんどありません。見た目もいいし、きちんと治療すれば30年以上持つケースも少なくないです。ただし顎の骨を削る手術が必要なうえ、治療費も高額になります」

 また、医療法人貴和会銀座歯科診療所の松井徳雄歯科医師もこう話す。

「インプラントは自分の歯に近い機能を取り戻すことができるうえ、虫歯になるリスクが少なくなります。ですが人工物を骨に入れるという処置そのものが受け入れられないという患者さんも少なくありません。どの治療も欠点と利点が必ずあるので、それらについて充分な説明を受けてから、自分にはどれが合っているかよく考えて選択してほしいです」

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