開演5分前、主役の登場を熱望する客席から、自然と手拍子が発生した。彼女の名を呼ぶ声は次第に大きくなり、会場がにわかに熱を帯びる。ステージが暗転し、ピンスポットがともる。ファンの前に姿を見せたのは、中森明菜(59才)。声援に手を振って応える明菜に、ファンは悲鳴にも似た歓喜の声を上げた──。
7月12~14日の3日間、明菜は自身のファンクラブ限定のディナーショーを都内で行った。チケットは7万円超と強気の価格設定ながら、全5公演は完売したという。
「明菜さんが人前でステージに立つのは2017年以来、約6年半ぶり。体調不良で活動を休止していたため、今回、明菜さんが本当に人前に出られるほどまでに回復したのか、誰もが確信を持てずにいました。
客には前日まで会場の場所が知らされないという前代未聞のショーで、ファンクラブに告知された事前の注意事項では、中止の可能性も示唆されていました。会場リハーサルが行われたのは本番直前だったそうです」(音楽関係者)
大きな期待と一抹の不安を胸に、ファンは会場へ向かうことになった。だが、ファンの前に姿を見せた明菜は、ブランクを感じさせないほどパワフルだったという。ステージでは、『スローモーション』『北ウイング』などの代表曲を中心に、シングルカットされていない楽曲も織り交ぜながら、計11曲を披露。メドレー以外はすべてフルコーラスでの歌唱だった。
「明菜さんは何度も『緊張している』と苦笑していましたが、ステージでのたたずまいはさすがの迫力で、ファン思いの選曲に胸が熱くなりました。楽曲はすべてジャズバージョンで、原曲よりもスローテンポかつキーの低いアレンジが多かったです。明菜さんは途中、アレンジに触れ“年だから声が出ないのよ”とこぼしていました」(ディナーショーに参加した人)
演奏の合間には、時にドスの効いた低音ボイスで、時にアニメ調のような裏声で、ファンの歓声にも応えながら変幻自在にトークを繰り出した明菜。その内容には少し毒っ気も含まれていたそうだ。
「明菜さんは昨今の音楽番組に対して思うところがあるようで、アーティストの激しいダンスパフォーマンスと口パク疑惑に言及していました。
また、公演期間中の7月13日は明菜さんの59才の誕生日。翌日の公演でファンに“おめでとう”と声をかけられた明菜さんは、冷めた声で“ただのクソババアでしょ。来年還暦よ?”とポツリ。さらに、“もう二度とステージに立たないかもしれない”という発言が飛び出したときには、会場内のあちらこちらから悲鳴が上がりました。MCの大暴れぶりもまた懐かしく、込み上げるものがありました」(前出・ディナーショーに参加した人)
無事にすべての公演を終えた明菜が、最後にファンに贈ったのは、ステージからの投げキッス。完全復活へ、貴重な第一歩となった3日間だった。
※女性セブン2024年8月1日号