試技の制限時間はわずか1分。限られた時間で集中する競技だが、三宅監督は宮本にこう言った。
「年齢としてもベストだし、経験を積んで精神的、肉体的も充実している。あとはメンタルだけ。宮本にアドバイスするとすれば“欲を出さず自分の記録を信じなさい”。それしかないね。金メダル? もちろん獲れますよ。金を獲った人が教えているんだから(笑)。これからの日本重量挙げ界を背負ってくれる人材だと思っています」
師匠から弟子へ、金の輝きが継承されるか。
【プロフィール】
宮本昌典(みやもと・まさのり)/1997年生まれ、沖縄県出身。小学6年で競技を始めた。中・高でも記録を残したが、東京国際大で三宅監督の指導を受けて急成長。世界ジュニアやW杯で結果を残すも、東京五輪では7位、メダルまで7kg届かなかった。
三宅義信(みやけ・よしのぶ)/1939年生まれ、宮城県出身。高校時代に競技を始め、法大を経て陸上自衛隊に入隊。4大会連続で五輪に出場し、東京とメキシコで連覇。現役引退後は多くの選手を育成し、日本重量挙げ界に貢献。現在は東京国際大監督。
取材・文/鵜飼克郎
※週刊ポスト2024年8月2日号