麻生氏を長年取材してきた政治ジャーナリストの藤本順一氏は、麻生氏が“石破包囲網”に動く準備があると見る。
「麻生さんのシナリオは党員票からなる1回目の投票で、一番人気の石破氏の圧勝を阻止して決選投票に持ち込むことです。麻生さんはいまだ約50人の議員を束ねており、その動向が決選投票の流れを大きく左右します。
まず、人気投票で常に上位に名を連ねる自派閥の河野太郎氏の出馬を容認し、さらに出馬に意欲を見せるものの20人の推薦人集めに苦労しそうな高市早苗氏に自派閥議員を助っ人として貸し出せば、党員票を分散させることができます。ダメ押しとして二階派若手の小林鷹之氏の出馬に手を貸すことで非主流派を分断して石破包囲網を敷きたいところでしょう」
前回の2021年総裁選では、石破氏は出馬せずに河野支持に回った。麻生氏は今回、その河野氏を“噛ませ犬”として石破氏にぶつけ、さらに高市氏や若手の小林氏などを支援することで“石破包囲網”をつくるという見方だ。
では、決選投票はどうなるのか。藤本氏は、カギを握るのはもう一人のキングメーカーであり、現時点では石破氏支持と見られる菅氏の動きだと指摘する。
「菅さんも、神奈川県連分裂につながる石破─河野の一騎打ちは避けたい。そこで菅内閣の官房長官だった加藤勝信氏をもう一枚の手持ちカードとして切ってくる可能性があります。実務派の加藤氏のことは麻生さんも高く評価していますし、共に政権を支えてきた故・安倍首相と縁続きの加藤氏が出馬となれば党内融和、結束を優先させることができる。石破─加藤の決選投票となれば加藤氏に流れる可能性は十分あります」
ダークホース加藤総裁の誕生だ。
(第3回に続く。第1回から読む)
※週刊ポスト2024年8月9日号