瀕死の岸田政権を尻目に、9月の総裁選に向けた「ポスト岸田」の動きが活発化している。「次期総裁にふさわしい人」の世論調査では各社とも石破茂・元幹事長が他の候補を圧倒的にリードしている。が、世論通りには進まないのが総裁選。長年取材してきた政治のプロたちの票読みとは──。総裁選をいくつかのケースに分けてシミュレーションした。ここでは“加藤勝信総裁誕生”のシナリオを紹介する。【全5回の第2回。第1回から読む】
【シナリオ1】“石破包囲網”で加藤総裁誕生
有力な総裁選候補のうち人気面でリードしているのが石破茂氏だ。
新聞・テレビの世論調査では全体でも自民党支持層でも「総理にふさわしい人」の1位につけている。幹事長や地方創生相時代から何度も全国を回った石破氏は地方の党組織に支持者が多い。反面、議員の支持が弱く、党員投票が実施されなかった2020年総裁選では菅義偉・前首相に大差で敗れた。
今回は党員による投票が実施される見込みであり、石破氏は党員票で優位。そのうえ、派閥の締め付けがない。選挙に弱い議員たちが「選挙の顔」となる石破氏に乗れば、“地滑り的勝利”になる可能性がある。
麻生氏が立てる2人の刺客
だが、自民党には石破氏を絶対に総理・総裁にしたくない実力者がいる。麻生太郎・副総裁だ。
石破氏は麻生内閣の農水相時代、総裁選前倒しを主張して“麻生おろし”に動いた。以来、「麻生氏は石破氏だけは許せないと深い怨恨を抱いてきた」(麻生側近)とされる。
安倍晋三・元首相と石破氏が争った2018年総裁選の時には、麻生氏は「『選挙の顔』としてどちらを選ぶか、よう考えてみてください。どちらの顔が戦いやすい顔か。暗ーい感じの顔ですか。答えははっきりしている」とこきおろした。