「来年7月に65歳の定年退職を迎える師匠の伊勢ヶ濱親方(元横綱・旭富士)は、後継者に照ノ富士を指名している。しかし、伊勢ヶ濱親方は定年延長で参与として協会に残る予定で、照ノ富士がすぐに『伊勢ヶ濱』の年寄名跡を譲ってもらえるわけではない。部屋の継承には交換する年寄名跡が必要となる。
だが、年寄名跡は不足しており、年寄名跡が多い二所ノ関一門の貴景勝も手当ができていない状況。弱小の伊勢ヶ濱一門にあっては、白鵬(現・宮城野親方)でさえ手当が大変だった。退職間近の再雇用の親方もいない。現在、『振分』と『出来山』が空席になっているが、『振分』は高砂一門の名跡だったものを先代の未亡人が出羽海一門の妙義龍に譲渡した。『出来山』も出羽海一門の名跡となっている。
春日野部屋の岩友親方(元幕内・木村山)が現役親方として亡くなったが、春日野部屋で十両の碧山が『岩友』を継承すると見られている。横綱や大関でも年寄名跡の入手は困難な状況となっている」(協会関係者)
照ノ富士は横綱経験者に認められる特例があるため、引退後も5年間は現役名で協会に残れる。ただ、それでも厳しい状況なのだという。
「照ノ富士が5年間の特例を使って現役名で協会に残った後、再雇用された伊勢ヶ濱親方から年寄名跡の譲渡を受けることは可能だが、そうなると伊勢ヶ濱親方の70歳で退職するまでは部屋をワンポイントで継承する親方がいないといけない。だが、部屋付き親方の楯山親方(元前頭・誉富士)は“自分は顔じゃない”と固辞している。
伊勢ヶ濱部屋には預かりという形だが、元横綱・白鵬の宮城野親方もいるわけで、そこで師匠をやりたいと名乗り出る親方はいないのではないか。あとは伊勢ヶ濱親方に再雇用を諦めてもらい、参与として支払われる5年間の給与を支払うシナリオもあるが、定年後も影響力を持ち続けたい伊勢ヶ濱一親方としては飲めない話でしょうね」(二所ノ関一門関係者)
土俵の上では復活した横綱だが、悩みがなくなることはなさそうだ。
※週刊ポスト2024年8月9日号