日本の観測史上もっとも暑い夏(6~8月)だった2023年の翌年なら、少しは暑さがおだやかなのではないかとの期待も虚しく、2024年も「十年に一度」レベルの猛暑がやってきている。熱中症警戒アラートが発令され「外出は控えて」「屋外での運動はやめて」などの呼びかけが行われる一方で、夏の甲子園大会を目指す予選が全国各地で行われている。クーリングタイムの導入など様々な対策がとられているが、実際に試合に関わる当事者たちはどう思っているのか。高校野球観戦を続けているライターの宮添優氏がレポートする。
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高校野球、夏の甲子園大会がいよいよ開幕する。全国の厳しい予選を勝ち抜いてきた代表校による、灼熱の中での熱い戦いは、いつの時代でも見る者を感動させてきたが、この数年の「暑さ」はワケが違う。関東南部にある公立高校野球部のS監督(50代)が訴える。
「試合に負けてしまったのは仕方ありませんが、最後の最後、守備の選手の足がつってボールを追いかけることができず、そのまま敗戦でした。このような環境じゃなければ、もう少し長く、子供達も野球ができたのではと思ってしまう。選手だけでなく、応援席の生徒、観客のことを考えても、開催時期についていい加減、しっかり対策をとる時期になっているのではないかと思います」
S監督が率いるチームは、予選で強豪私立校にコールド負けを喫した。コールドが決まった最後の一点は、大きく打ち上がったボールを追いかけた外野手の足がつり、その場に倒れ込んでしまったことで失った。確かに負けたことは事実だが、コールド負けは想定外だったとうなだれる。力が及ばなくても、少しでも長く野球をしたいのが当事者の本音だろう。
「その試合の日は、朝から気温が30度を超えていました。我々だって暑さ対策も考慮した練習をしていますが、それでも両チームに、足がつる選手が続出。3回ごとに“給水タイム”はありますが、それでも両チームで7人の足がつって、治療時間など含めて30分以上かかったんです」(S監督)
S監督によれば、本番の暑さ対策に、ユニフォームの下に履くストッキングを二枚重ねにしたり、分厚い練習着を着るなど、暑さに慣れるための考えられる様々な対策を実施してきた。だが、年を重ねるごとに「対策が無駄ではないか」と考え、人間が慣れるにも限界があると思うようになった。
見る側、応援する側としても辛い
直前に行われた別の試合でも、やはり両チームに同様の選手が続出していた。救護が必要なのは弱小校の選手だけでなく、大きな負荷をかけた練習を重ねて鍛えた選手がそろう強豪校であっても、関係無く起きている。そんな様子を見たS監督は、こんな条件で試合をしても「もはやまともな野球ができない、練習の成果を発揮できない」と感じたという。