霊なんていない──そうかもしれない。ただ、今回紹介する話は実際にあった体験談を聞き、ありのままを書いている。それが心霊現象なのか、勘違いなのか、人の所業なのか……読んだあなたが判断してください。
「ぼくは殺人や自殺、孤独死のあった“事故物件”にばかり暮らし始めて12年になるのですが、そうなると、人が死んだ場所で生活することが当たり前となり、“怖い”と感じることが少なくなります。そもそもぼく自身に霊感のようなものはなく、不思議な経験をすることはあるのですが、霊を見たことはありません。ただ、“霊が見える”というかたに数多くお会いし、話を聞く中で“人の恐怖って何だろう?”と思うようになり、日々その答えを探しているんです」
と話すのは、“事故物件住みます芸人”の松原タニシだ。めったなことでは恐怖を感じないという松原だが、それでも最近、ゾッとしたことがあったという。
行きにはなかったのに、帰りには…
「場所は言えないのですが、ある廃墟マニアの男性から“ちょっと変わった場所がある”と言われ、関西のとある森の中を案内してもらうことになりました。山道を歩き始めたのは夜11時。30分ほど歩いたところで、彼が突然、“あれ? 話し声が聞こえませんか?”などと言う。でも、真夜中の山中ですから、人がいるはずもありません。ぼくは聞こえなかったということもあり、とりあえず、お目当ての場所へそのまま向かうことになりました。
どれほど歩いたのかわからなくなった頃、彼が“ああ、これだ”と、懐中電灯を当てました。そこには、首がない女子高生が……いたわけではなく、制服のブラウスとスカートを着せられた木がありました。すると彼は、“おかしいな、先週来たときはスカートだけだったのに、今日はブラウスも着ている”と──しかしその新しく着せられたというブラウスはすでに苔むしていて、近づいてよく見ると、下着まで着せられていました。
彼が、“もう少し奥に行くと、ほかの制服を着せられた木もあるんですよ”と言うので、さらに20分ほど山中を進むと、今度は冬服を着せられた木や、キャミソールだけ、下着だけの木も……。“う~ん、1週間前に来たときと位置が変わっているなあ?”と首をかしげる彼。一体誰が何の目的で、衣類の配置を変えているのかわからないまま、見るべきものは見たとしてぼくたちは来た道を戻ることに。行きに通った場所にたどり着くと……そこには子供用の体操服を着せられた木が。これは明らかに行きの道中にはありませんでした。となると、たったいままで、ぼくたちのすぐ近くに誰かいたのか?──恐怖に慣れたぼくでも、すぐにその場を離れたくなりました」(松原・以下同)