インターネットやSNSが普及したことで様々な物事が可視化されてきた。より広範囲に知識を得られる、都合の悪いことを隠そうとする動きを止める、というよい効果もある反面、不適切なものを不特定多数に見せる、押しつけるといったことがたびたび起きて、現実の世界でのトラブルに繋がっている。年齢などのゾーニングがない出会い系掲示板から発展する不適切行為が横行する場所の隣人や施設管理者の苦悩を、ライターの宮添優氏がレポートする。
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今年6月、主要大手4紙の一つである産経新聞記事のタイトルに、実に堂々と「ハッテン場」の文字がおどり、ネットユーザーの一部が騒然とした。事情を知らない人には、いったい何のことか理解不能かもしれないが、新聞記者界隈ですらざわついたと話すのは、主要4紙の別の社に所属する社会部記者だ。
「ハッテン場とは、いわゆる同性愛志向の方が集まる場所のことを指し、諸説はありますが、恋愛関係にハッテン(発展)するという意味合いで使われているようです。ですが、性的かつ俗っぽい言葉であり、そもそも新聞記事でこうした言葉をみるとは思わず仰天しました。産経新聞の関係者によれば、ネット記事の閲覧者は相当数いたようで、実際に、産経新聞のホームページの人気ナンバーワンの記事は、しばらくこの記事でした」(大手紙社会部記者)
というわけで、読者だけでなく同業記者まで驚き、ネット上では面白半分に扱われた当該記事だが、内容はいたって真面目で深刻だ。都内で長年銭湯経営を続けるAさん(70代)が顔をしかめる。
「うちの銭湯でも、男湯の中で怪しい行為に及ぶ客がこの数年で増えて、頭を悩ませていたのでやっとちゃんとした記事が出たと思いましたよ。何しろ警察に通報しても、恋愛は自由とか言われて取り合ってくれない。実際、一般の男性客を誘ったり、周りに見えるような形で性的行為に及んだ挙げ句、汚して帰っていく奴もいる。浴槽内を汚され、別の客からクレームが入ったこともある。取材に来た新聞記者が教えてくれたんだけど、うちのことが、ネット上(の掲示板に)に色々書かれているらしくてね。ここに行けば会えるとか、待ち合わせまでしているらしい。悪評が回ったんだろう、当然客は減ったね」(Aさん)
Aさんによれば、銭湯内でのそういった類いの行動は、何十年も前からあったという。しかし、あくまで秘密裏に、こっそり行われることがほとんどだった。せいぜい脱衣場などで“いちゃつく”程度で、長年番頭を務めてきたAさんだから気がつくレベル。他の客の迷惑にならない限りは黙って見過ごしていた。しかしこの10年ほど、特にネット掲示板やSNSの利用者が多くなるにつれ、限度を大きく超えた迷惑行為に及ぶ人が増えたと断言する。そして、その迷惑行為は、銭湯以外の場所でもさらにエスカレートしている。