「お笑いって、懐が深いじゃないですか」
軍用地主の家族が顔をさらして取材を受けるのは異例中の異例だ。もとしは、取材を受けた理由をこう語る。
「積極的に語りたいとは思わないけど、聞かれたら否定はしない。それに、自分じゃなきゃ明かせないと思うんです。お笑いって、懐が深いじゃないですか。嫉妬も笑いに変えることができる。あんなに笑ってくれるんですから。米軍基地は永久に答えの出ない超難問。だからといって、無関心になってしまうことがいちばんよくない。僕がこうして話すことで少しでも関心を持ってもらえるなら、それが僕の使命なのかなって」
小波津は、もとしのために冒頭のコントをつくったのだと話す。
「芸人は職業ではなく生き様。僕は芸人として彼にもっと自由になって欲しかった。あのコントは、そんな僕からのメッセージでもあります」
もとしの話を聞き、ひとつだけ心配でならなかったことがある。
──蓋を開けたら両親が言うように軍用地なんて持っていなかった、ということもあるのでは?
「ありえますよね。でも、それでもいいです。芸人として、そのオチはおいしいので」
【プロフィール】
中村 計(なかむら・けい)/1973年、千葉県生まれ。ノンフィクションライター著書に『甲子園が割れた日』『勝ち過ぎた監督』など。近年はお笑い関連の取材・執筆を多く手がける。趣味は落語鑑賞。近著に『笑い神 M-1、その純情と狂気』。
※週刊ポスト2024年8月9日号