ミュージカル出身アーティストが、地上波テレビの歌番組やドラマで活躍するケースが増えた。次にどんな魅力的な人が出てくるのか、期待されている。その一人が劇団四季出身の小林唯さん(31)だ。昨年末に退団したばかりながら、直近では、アンジェラ・アキが音楽を担当したミュージカル『この世界の片隅に』に出演し、年末から2025年にかけては帝国劇場ほかで上演されるミュージカル『レ・ミゼラブル』に出演する。大作に次々キャスティングされている小林さんの素顔に迫った。
* * *
──『この世界の片隅に』は劇団四季退団後の初作品。この5月に東京・有楽町の日生劇場でスタートし、札幌、岩手、新潟……と回り、7月28日の広島が最後となりました。
「僕は劇団でミュージカルをやってきましたが、ミュージカル以外の現場も経験してきた方たちとの共演は新鮮で、稽古の進め方から表現の仕方から、これまでとはだいぶ違いました。学んだことは山ほど。これまでは会場全体に届くように、大きく表現してきました。『この世界の片隅に』では、よりリアルな人間描写にアプローチするパーソナルなお芝居が必要だと感じました。今後はストレートプレイやドラマ、映画など映像でのお芝居にも挑戦したい気持ちが強くなりました」
──ステージ外での新しい楽しみもありましたか。
「劇団四季では同じメンバーでずっとやっていましたが、『この世界の片隅に』は3か月で解散ですから、共演仲間とは短い間により濃密な時間を共にしています。地方に行った際に観光地をドライブしたり、食事に行ったり。
普段は初めて会う人に心を開くのはあまり得意ではなく、グルメでもないのですが、食べるのが好きな人に誘っていただいて、札幌ではお寿司、松本ではお蕎麦などをいただきました。お酒もたしなむ程度ですが、飲んで語りあったりも。このカンパニーは同世代が多いし、最初のアウェイから、今ではすっかりホームの感覚です(笑)」
──劇団四季からのファンの反応はいかがですか。
「『小林さんのお芝居が変わらず好きです』という手紙やSNSにメッセージをいただいています。お客さんが舞台に没入していただけるように、僕が変わらず、言葉やリアリティのあるお芝居を大事にしていることが伝わっているようで安心しました」