3年前の東京に続き、日本選手の活躍に期待が集まるパリ五輪。日本選手の躍動が連日伝えられているが、土壇場で集中力を発揮したのが大逆転によって金メダルを手にしたスケートボードの男子ストリートの堀米雄斗(25才)と、体操の男子団体で最終種目の最終演技者だった橋本大輝(22才)だ。2人の「注意集中」について、臨床心理士の岡村美奈さんが分析する。
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開催中のパリ五輪、トップと差をつけられながら土壇場で逆転し、金メダルをその胸にかけた2人のアスリート。彼らに共通するのは極限での集中力だ。
暫定7位から大逆転でオリンピック連覇を決めたスケートボード男子の堀米雄斗選手。ストリート決勝ではベストトリックという技を失敗し続け、後がなくなった最後の1本で見事逆転。その最終滑走で彼が集中のために行ったのは、つけていたイヤホンの音楽をかけないこと。スケートボードではルール上、イヤホンの使用が許可されている。彼ら選手がイヤホンをつけるのは、リラックスしてプレッシャーを軽減、外部の雑音をシャットアウトし、集中力を高めパフォーマンスを向上させるためだという。
だが堀米選手は「イヤホンつけてたんですけど、音楽とかもかけないで。出来るかぎり自分と集中できるようにして」とインタビューで振り返った。集中力をコントロールし、自分がそうしたいと思った時に望んだものに望んだように集中できるか。それが勝敗を分ける。今回、自分自身と向き合って集中力を高めていくのに音は必要なかったようだ。無音の中、高めた集中力で彼は逆転の大技を決めた。その集中力は「注意集中」だろう。
注意集中とは、雑念や妨害刺激にとらわれずに、競技そのものに注意を向け持続させることだといわれる。注意を一点、一領域に集中させ焦点化するというもので、高められた集中力によって覚醒状態に入りやすいという説もある。人気漫画『鬼滅の刃』でいえば「全集中の呼吸」で、高い集中力と身体能力が可能になるというイメージだろう。ここで必要なのは自分が集中するだけではなく、堀米選手が言う「自分との集中」。そして緊張感を高めた状態からすっと力を抜くことで発揮される集中力のコントロールだ。