近づいてくる車をよく見ると、「天井に提灯がついていてね。都内でもよく見かけるタイプのタクシーだ。成田空港にでも急いで向かっていたのか、とにかくかなりのスピードで走ってきた。追い越し車線のその先にワゴンタイプの軽自動車が走っていてね。あっという間に追いついた」(W氏)。運転していたタクシードライバーは真面目そうな中年男性だったという。
W氏の目の前でタクシーが車間距離を詰めて軽自動車を煽り始めた。ところが軽自動車は追い越し車線をどこうとしない。「気が付かないのか、どく気がないのか危ないな」とW氏は思ったらしい。タクシーは左車線から軽自動車を追い抜こうとしたが、W氏の前を走る左車線の車が邪魔でうまく追い越しができなかった。ここまでは、W氏もまだ煽り運転とは思わなかったという。
タクシーはスピードを緩めると、左車線を走るW氏の後ろについた。「前の車と車間距離が十分あいていなかったので、そのまま走り続けたが、今度は俺を煽ってきた。追い越し車線に行こうとすると、タクシーも後ろをついてくる。走行車線に戻ると、スピードを上げて車の前に割り込み、スピードを落とす。完全に煽り運転だ。タクシーで煽るなんて、こいつ正気じゃないなと思ったよ」とW氏。
追い越し車線にいた軽自動車が隣に並ぶと運転手が見えた。かなり高齢の男性だ。煽り運転をするタクシードライバーも、相手が悪いと思ったのだろうか。煽りのターゲットをシニア男性ではなく、ヤクザというよりヤンチャなイケオジ風に見えるW氏に的を絞っていた。「煽る方も相手を選んでいるのさ。シニア男性なんて煽ったら、すぐに事故を起こされる。ターゲットをオレにしたところから、たぶん常習者だ」とW氏は分析する。
煽ったり、割り込んだり、蛇行運転したりを繰り返すタクシーに、W氏は車線を変更することなく、前を向いてそのまま走り続けた。「一般人は危ないと思ったら、その場からすぐに警察に通報した方がいい。オレたちはそうもいかないがね。警察の世話にはなりたくないから、やりすごすしかない。いいターゲットを選んだものだ」と話すW氏は、出口が近づいたところでハンドルを左に切り、高速を降りた。
その後、どうしたのか?と聞くと、「東京タクシーセンターに通報した」という。「タクシー会社とナンバーがわかっていたからね。たぶん何らかの処分をされるだろう。ドライブレコーダーに記録があっても、警察に行くわけにもいかない。でも野放しにもできないからな」(W氏)。
煽り運転に出会ってしまったら、すぐに警察に通報することをW氏はすすめている。