来年のNHK大河ドラマ『べらぼう』への出演が発表された俳優の石坂浩二(83)。今年で芸歴66年となったが、昔からの印象は変わらぬまま、その演技と存在感は年々深みを増している。そんな石坂浩二に「老い」への向き合い方を聞いた。【前後編の後編。前編から読む】
プラモデルとプロ野球
昔から多趣味で知られる石坂浩二。12年連続で二科展入選など画家としての評価も高いが、特に力を入れるのが「プラモデル」だ。
「15年ほど前、団塊の世代が一気に定年退職を迎えましたよね。その時、女性はいろいろな趣味があるけど、リタイアした男性は自宅でぼんやりして孤独感に苛まれると話題になりました。
そこで何かできないかと思いついたのがプラモデル。みんな子供の頃に通ってきた道だし、高齢男性が抱える孤独感を少しは解消できるのでは、と考えたんです」(石坂・以下「 」内同)
同世代を元気づけるため、2009年にプラモデルのサークル「ろうがんず」を結成。現在は最年長の86歳以下、14人のメンバーが在籍して展覧会など精力的に活動している。
「グループ名は『老眼』から取りましたが、年に2回の展覧会で会場のテーブルを運ぶことが体力的にしんどくなってきた。それで『老眼なんてどうでもいいから若いやつを入れよう』となって、40代を2人入れました」
東京生まれの石坂は意外にも生粋の阪神ファンだ。『べらぼう』で共演する渡辺謙(64)とは阪神ネタで盛り上がるという。
「謙さんは甲子園近くに連泊して試合を見ることもあるそうです。今年の阪神は去年の“アレ”と違って伸び悩んでいますが、私はタイガースの独特な雰囲気が好きなので、負けてもそれほどガックリしない。むしろ上手くいきすぎてもモヤっとするし、苦労もまた“味”として楽しんでいます」
ひとつのことをずっとやり続けるよりも、いろいろなことを少しずつやることを好む。プラモデルやプロ野球といった“昭和的”な趣味を持つ石坂は「僕はアナログなものが好きなんです」と語る。
「絵を描くのも戦時中の疎開先で始めました。スマホはあまり使わず、家の電話は不在時に出られないので、大切な連絡は必ずファックスしてもらいます。相手には嫌がられるけど、ファックスなら確実に見ますから」