時には白熱して議論する場面も(c)濱崎慎治/講談社

時には白熱して議論する場面も(c)濱崎慎治/講談社

 書籍に登場するのは、細川、安倍、菅の3人の元首相と官房長官を務めた梶山静六氏。4人それぞれと密接な関係を築いてきた鈴木氏だが、中でも、1998年の自民党総裁選出馬に際し、「総裁選に立つことにした。ついては文春の社長に頼むから、3年、補佐官をやってくれ」とまで懇願されたという梶山氏との交流はひときわ濃密だ。

「若手時代、日銀マンや証券マン、大手シンクタンク研究員のみなさんと勉強会を重ねていて、経済政策について検討していました。梶山さんには、その成果を『金融ルネサンス』というメモにして、毎週提出していたんです。

30週以上届けて、ある時やっと、『メモについて、質問がある』ということで、面会する機会を得た。バブル崩壊からの経済再生に本気で取り組む梶山さんとは、そこから長期にわたって深く関わっていくようになりました。菅さんとの縁ができたのも、実は梶山さんから紹介されたのがきっかけなんです。

議論が白熱し、『別に先生のためにやっているんじゃない、お国のためにやっているんですよ』と放言したこともありましたが、梶山さんは『ほおッ』と受け止めてくれた。時には、番記者たちとの会食に呼ばれ、『となりに座れ』と言って、彼らに仲間として紹介してくれたこともありましたね」

 編集者生活で名刺交換した人は1万5000人を超えるという鈴木氏、国の舵取りを担う大物政治家たちにも食い込む、人付き合いに極意はあるのだろうか。

「『週刊文春』や『月刊文藝春秋』といった雑誌の編集者は、扱うテーマが多岐にわたるので担当という概念が薄い。担当者間のしがらみもそこまでない分、これはと思った人に自由に接触できる。そこで深く人間関係を築くことができれば、電話一本でやり取りできるようになるわけです。

事件取材を長く担当したある敏腕司法記者は、『検事が地方に赴任したときに会いに行くんだ』と話していました。要するに、その人が恵まれないポストにいるときにこそ通うんです。安倍さんもそうでしたよね。失意のうちに首相を辞任して、第2次政権を樹立するまで、その5年間に通った記者だけが、彼にとって信頼できる番記者だったんです。

すなわち、不遇の時代に訪ねていくのが大切なんです。それは政治家だけでなく、経済界などビジネスの場面でも同じです。その人の人生が上手く行かない時に親しくなると、大事な局面で『じゃあ、君に教えてやるよ』となるわけです。栄耀栄華を極めている時に行っても、みんなが群がっているから相手にしてくれる時間もないですしね」

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