対決を望んだ中学生時代
中学硬式野球の関西ナンバーワンを決めるこの大会で度肝を抜かされたのは、当時、関メディベースボール学院に所属していた金本だ。中学2年生ながら甲子園に特大のアーチをかけ、この大会で敢闘賞を受賞した。当時から、チーム1となる「149km/h」のスイングスピードが自慢だと口にした。
「むちゃくちゃ気持ち良かったです(笑)。高校に進学して、またここに戻ってきたい。打つだけじゃなく、走れて守れる選手になりたい。憧れはイチローさんです」
一方、明石ボーイズのエースだった福田も181センチの長身からMAX137キロのボールを投げ込んでいた。
「藤川球児さんのように、分かっていても打たれないストレートを追求したいです。浮き上がるようなイメージのボールですね。良きライバルと出会うためにも、良い高校に進学したいと思っています」
そう、福田は2年半前から阪神で活躍した藤川氏のようなボールを追求していたわけだ。
中学2年生が中心となるタイガースカップは、いわば将来の甲子園球児の見本市だ。全国の強豪私立に請われて入学するような中学生は、おおよそ中学3年の春頃には進路が決定する。それゆえ、中学2年の師走に行われるタイガースカップはプロを夢見るような選手にとっては大事なアピールの場なのだ。
福田は進学先について、大阪桐蔭と地元の明石商業、そして東海大相模と迷っていると話していた。一方の金本はタイガースカップで実現しなかった福田との対決を夢見ていたが、ふたりは同じ東海大相模に進学した。金本は2回戦・富山商との試合後、はにかみながらこう話した。
「もう一度、甲子園でホームランを打ちたいですね。初戦では打てませんでしたから。ただ、狙ってばっかりだったらバッティングにならないんで、(本塁打が)打てたらいいな、ぐらいの気持ちで入りたいです。福田と一緒に、日本一を目指したい」
かつて意識し合ったライバルは、同じ甲子園の夢を共有して、同じ学校に進学し、同じく聖地・甲子園の舞台で躍動する。広陵との名門対決に勝利することができれば、深紅の優勝旗が視野に入ってくるはずだ。
■取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)