最速138キロ、変化球2種類ながら抑えられた理由
西川の直球の最速は138キロだ。変化球はスライダーとチェンジアップの2種類しかない。計3種のボールをクイックで投げたり、セットに入ってからしばらく動かず、ゆったりとしたフォームで投げてみたり。幻惑投法で大阪桐蔭の強力打線を封じた。
「打者の顔つきや踏み込み具合の反応を見ながら、すべて思いつきでやっていることです。たとえば、相手が打ち急いでいるようなら長く持ったり、クイックで投げる時にあえてチェンジアップを投げてみたり。打者心理として、クイックで投げる時はストレートだと思うことが多いんで、そこにあえてチェンジアップを投げるんです。同じ球速のボールでもインコースとアウトコースでは打者の体感速度が違いますよね。そういう緩急も使いながら投げました」
相手の裏をかきながら、時に裏の裏をかいて困惑を誘うのだ。桐蔭には4番を打つ徳丸快晴などミート力も足もある好打者が揃い、代打には一発のある右の大砲であるラマル・ギービン・ラタナヤケが控えていた。
「徳丸に関しては、3回にストレートを強くミートされて(結果はライトライナー)、“これはストレートを待っているな”というのがわかった。だから変化球でカウントを整えて、最後はストライクゾーンからボール一個分ぐらい外れたストレートで勝負したりしてました。(2対0の7回裏に代打で登場した)ラマルは、もう長打しか狙っていなかったと思うので、真ん中から外のボールを投げて、バットの先に当ててくれたら十分と割り切っていました。大きな打球がレフトに飛んで大きな歓声が起きましたけど、僕は絶対にフェンスに届かないと確信していました」
年間20試合以上は大阪桐蔭の試合に足を運ぶ筆者もあれほど簡単に打たされてアウトになっていく大阪桐蔭は見たことがない。
「後半に入って、さすがに僕自身もこのままでは終わらないだろうって思っていました」
それは球場にいたすべての人が思っていたことだろう。
「ハハハハ、そうですね。前半はストレートとスライダーを中心に組み立てられたことで、後半に入ってチェンジアップが有効的に使えたと思います。集中が途切れることなく、最後まで投げ切れたと思います」