長い歴史のなかで、日本のプロ野球のあり方は大きく変わった。そうしたなか、令和の球界をプロ野球のレジェンドたちはどう見ているのか。本誌・週刊ポストの名物企画「言わずに死ねるか!」球界編では、その計り知れないスタミナから現役時代に「ガソリンタンク」と呼ばれた元阪急・米田哲也氏(86)に話を聞いた。故・金田正一氏(元国鉄、巨人)に次ぐ歴代2位となる通算350勝をあげた鉄腕は、自身の経験をもとに、投手の“分業制”が球界の常識となっていることについて疑義を呈した。【全5回の第4回。第1回から読む】
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先発を任されたら完投を目指す。その能力がなければ先発ローテに組み入れちゃダメだね。今の選手は、まず文句から始まる。昔は肩が壊れたら辞めてやるというくらいの覚悟を持っていました。今は球団が選手を甘やかし過ぎで、過保護に育てているから、そんな覚悟のある選手はいないんでしょうね。
監督やコーチは故障した時の責任を負いたくないから中6日にして、分業制にしている。でもね、先発能力があれば誰でも150球ぐらい投げられますよ。投げさせないなから完投能力がつかなくなる。
そもそも、中6日で故障する投手がいることに驚いている。原因はひとつ。投げ込み不足です。キャンプのブルペンで1日に150球投げる投手がいませんからね。ブルペンで100球も投げずに完投しようというほうが無理。試合で1イニング15球を投げて、それが9回で135球ですからね。シーズン中に完投できそうな場面になっても、球数を投げていないから135球が未知の世界になる。これでは話にならない。
キャンプでは1日350球投げた
球数を投げることで初めてコントロールがつくんです。ボクはキャンプでは1日350球を3回ぐらい投げました。1時間半はかかるので、キャッチャーが大変。そのため専属のブルペンキャッチャーを置いていたほどでした。ただ、投げるほど体のキレがよくなります。300球超を投げることで、体のバランスができてくる。たとえば上半身と下半身のバランスがよくないとうまく投げられない。球数を投げることで、理想的な投げ方も体感できるわけです。
昔は先輩が球数を投げるから、若い者も投げざるを得なかった。ボクや山田(久志)の投球を見ていた佐藤義則が“先輩が投げるから”といって付き合っていたが、そういう選手ほど長く現役を続けられた。
プロ野球で自分の限界を見極めるぐらいの投げ込みをやれば、中継ぎや抑えなど不要。先発完投できます。高い給料もらって1イニングだけ投げるようなピッチャーがいる継投策は止めるべき。
ボクの949試合登板はカネさん(金田氏)を抜いた数少ない日本記録ですが、中日の岩瀬仁紀の1002試合に抜かれてしまった。でも、ボクが5130イニングに対し、ストッパーの岩瀬は985イニング。同等に扱われたくないとい気持ちが強い。それぐらい先発完投に誇りを持っています。