記録的な売上から一転逮捕に至ったヌード雑誌
1991年、樋口可南子のヘアヌードを皮切りに、世間は“ヘア解禁”に沸き立った。女優やアイドルまでもがヘアをさらけ出す中、1993年4月に『月刊 ザ・テンメイ』が創刊された。撮影者は加納一人という前代未聞の雑誌だ。
「当初こそ中島宏海や白都真理など名のある女優をモデルにしたけど、そのうち素人でも何でも連れてこい! となった(笑)。胸や尻の大きさなんて関係ない。エロスの表現は脱いでみないと分からない部分もある。オレの一言で顔をしかめる女もいれば、濡れる女もいる。その非日常的な瞬間が写真に投影されるんだ」
創刊号で〈時代とケンカして、ドブに捨てられる運命の100万部雑誌を目ざす〉と宣言し、毎号70万~80万部の大ヒット。出版社は「札束を刷っているようなもの」とほくそ笑んだという。
〈こんなに売れるなんて、世の中まちがっている〉。そんな挑発的なコピーも表紙に躍ったが、1995年2月、加納はわいせつ図画販売の容疑で逮捕される。
「ヘアヌードのトップランナーだったから、お上も代表選手を引っ張っておこうと思ったんだろうな。10日程の勾留中、同じ部屋にいたオレのファンが肩を揉んでくれてね。『ところであんた、何やったんだ?』と聞くと『ちょっと1人殺しまして』と。楽しかったとは言わないけど、知らない世界を垣間見ることができて、貴重な体験だったな」
御年82歳。時代を騒がせたい気持ちは健在だ。肉体的にも精神的にも男を勃起させるような作品。それが加納の信条だ。
【プロフィール】
加納典明(かのう・てんめい)/1942年生まれ、愛知県出身。1969年に個展「FUCK」で注目を集める。1993年『月刊 ザ・テンメイ』を創刊。過激なヌード撮影に挑み続けている
取材・文/小野雅彦
※週刊ポスト2024年8月30日・9月6日号