「暴力を振るわれたから警察に行く!」
加えて最近は「デポジット」と呼ばれる新システムまで誕生しているとあおいさんは続ける。
「先にホストクラブに一括してまとまったお金を預けておき、その中から毎回の会計金額を引いて行くシステムです。たとえば、30万円預けていたら、じゃあ今日はここから5万円だけ使おうね、といった具合。一見、お客に対して良心的なシステムのようにも見えます。しかし“ホス狂い”の女のコたちはお金があればあるだけ使ってしまうようなコがほとんどです。
中には、その月に稼いだお金をぜんぶ“デポジット”して、事実上ホストに給料を管理されてしまっているという女のコもいるほど。ホストと女のコの関係性は、ある意味でさらにいびつになっているとも言えるのではないでしょうか」
そのような“健全化”の余波をあらぬ形で受けているのは、女のコたちに留まらない。ホスト側にも“被害者”が出ているようだ。
「悪質な客の間では、ホストたちを相手にした『示談詐欺』が横行しているんです。これは、アフター(※ホストクラブの営業終了後に指名ホストと飲みなおしに行くこと)などの場でわざと、担当ホストを怒らせるような言動をして、相手が激高したらその場で派手に転んだりしてその彼が所属する店に『暴力を振るわれたから警察に行く!』と言いつけ、示談金をせしめるというものです。今は、ホスト業界は逆風にさらされており、何かあったら一発で営業停止。店側は“ちょっとおかしいのではないか”と思っても、泣く泣くお金を払うしかないのです」
にわかには信じられない話ではあるが、あおいさんの周りでは、現在実際に起きていることなのだという。全国紙社会部記者が言う。
「かつて、故・石原慎太郎元都知事が『歌舞伎町浄化作戦』を打ち立てた際には、規制された風俗店や暴力団などは、表面上はいなくなったものの、地下に潜り、見えないところでよりグレーなものとなった。20年後の今、同じ空気を感じずにはいられません」
本当の意味での「健全化」が待たれる──。